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デザイン思考とは?
5つのステップとビジネスシーンでの実践事例を解説

ビジネスに役立つさまざまな思考法がありますが、デザイン思考に注目している人も多いのではないでしょうか。一見、見た目の印象や装飾などをイメージするかもしれませんが、そうではなくビジネスパーソンにも役立つ思考法です。

この記事では、デザイン思考の必要性や身につける5つのステップ、効果、実践事例まで詳しく解説します。

デザイン思考とは?

デザイン思考(デザインシンキング)とは、デザイナーがデザインする過程で用いている思考プロセスをビジネスに活用した考え方のことを言います。ここでいうデザインとは、衣類やインテリア、建築物などを装飾したり、実際に作ったりすることではなく、設計することを指している点に注意が必要です。

デザイナーは、装飾する行動に取り掛かる前に、どのような形にするか、どのような配色にするかなどを緻密に設計しています。ニーズや目的を考える、ユーザー視点を考える、試作をするなどのデザイナーが行っている設計の順序をビジネスに取り入れたものがデザイン思考です。

現在、GoogleやYahoo Japanなどの大企業でも導入されており、今後も重要性が高まることが予想されます。

デザイン思考とアート思考の違い

デザイン思考と似た思考法として、アート思考という思考法があります。どちらもデザイナーに関連がある言葉に見え、つい混同しがちですが、両者は異なる思考法です。

まず、デザイン思考は、ユーザーやクライアントのニーズを前提としてアイデアを発想します。ニーズが軸となるので、ゼロから発想するのではなく、既にあるニーズやプロダクトをより飛躍させる思考法なのです。

一方、アート思考は、ユーザーやクライアントのニーズ、実現性は考慮しません。型にはまらない自由な発想によって、ゼロから独創的なアイディアを創り出します。

思考の仕方や目的が異なるので、デザイン思考とアート思考のどちらが優れているということではありません。それぞれに使いどころがあるので、シーンに合わせて使い分けることが重要です。

例えば、既にあるプロダクトの売上をアップさせたいときには、デザイン思考が向いています。最新のニーズを基盤に商品設計をすることによって、ニーズを捉えた新商品が生まれるでしょう。

これまでにないまったく新しいプロダクトを生み出すなら、アート思考が必要です。ニーズや実現性は気にせず、思うがままに思考することによって、予期せぬ革新的なプロダクトが生まれるでしょう。

デザイン思考はなぜ必要なのか?

デザイン思考が求められる理由は、社会の目まぐるしい変化です。グローバル化やAI技術の発展をはじめとした様々な変化はビジネスにも影響を与え、これまでのやり方では通用しなくなっています。

Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)で構成された「VUCA」という言葉が現れたように、仮説検証型のアプローチでは後手に回る可能性が高くなっており、不明瞭で複雑な社会に対応する力が求められているのです。

デザイン思考では、次で解説する共感・定義・概念化・試作・テストというステップで設計を行うため、VUCAの時代でも確実なイノベーションを起こすことができると、必要性が注目されています。

デザイン思考の5つのステップ

スタンフォード大学のハッソー・プラットナー・デザイン研究所では、デザイン思考の実践や習得には、5つのステップがあると提唱しています。以下のステップについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

  • 共感(Empathize)
  • 定義(Define)
  • 概念化(Ideate)
  • 試作(Prototype)
  • テスト(Test)

共感(Empathize)

最初のステップである共感(Empathize)では、ターゲットユーザーのニーズを捉えます。デザイン思考の軸となる部分で、ユーザー視点を元にして以降のステップを進めるため、非常に重要です。

ユーザーのニーズを捉えるためには、インタビューを行うのが一般的です。インタビューを闇雲に行うのではなく、何を知りたいかを明らかにした上で聞く必要があります。そうすることによって、プロダクトの開発に役立つ回答を得やすいです。また、プロダクトのターゲットを細かく設定し、誰にインタビューするかを決める作業も大切になります。

定義(Define)

定義(Define)のステップは、ユーザーインタビューなどの結果を元にして、課題や問題を定義する段階です。例えば、新しい家電の開発に向けたインタビューを行い、「部屋に馴染むデザインがあると良い」「カラーや形も気にしたい」などの意見があれば、デザイン性やカラーバリエーションが課題とわかるでしょう。

問題定義をする際は、すぐに結果を求めず、インタビュー結果を掘り下げたり、一度固まった仮説を再度検証したりするなど、丁寧に行う必要があります。思うような仮説が立てられなかった場合には、共感(Empathize)に立ち戻ってユーザー調査をすることも必要です。

概念化(Ideate)

概念化(Ideate)のステップでは、定義(Define)で固まった仮説を解決する方法を形にしていきます。ここでは、ブレーンストーミングという複数人で行う会議などを行い、アイディアや手法を出し合い、最適な解決策を見つけることが大切です。

質にこだわりすぎると、意見の量が減り、活発な議論ができない場合があります。質はいったん気にせずに、とにかく多くの意見を交わすことが重要です。

試作(Prototype)

試作(Prototype)では、概念化(Ideate)で最終的に決定したアイディアや手法を元に、試作品を開発するステップです。

試作品をつくることによって、実際に手に取ったり、操作したりする過程で、新たな改善点や強みなどに気づくことができます。

概念化(Ideate)の段階と同じように、質にこだわりすぎず、まず作ってみることが大切です。とりあえず形にして、新たな議論のきっかけにしましょう。

テスト(Test)

テスト(Test)の段階では、試作品でユーザーテストを繰り返します。良かった点や悪かった点などのフィードバックを参考に、新しい試作品をつくり、テストを続けるのがポイントです。

ニーズにマッチしているか、改善点が反映されているかなどをしっかり検討することによって、質の高いプロダクトになっていきます。

デザイン思考の効果

デザイン思考を実践することによって、以下のような効果を期待できます。

  • アイデアを提案しやすくなる
  • イノベーションが生まれやすくなる
  • 多様な意見が受け入れられるようになる
  • コミュニケーションが活発になる

一方で、デメリットもいくつかあるので、あわせて確認しましょう。

アイデアを提案しやすくなる

デザイン思考では、ニーズを軸にして、プロセスを繰り返しながらアイデアを生み出していきます。試作(Prototype)というステップがあるように、まず考える、とりあえずつくってみるという姿勢があるので、質をいったん置いて考える習慣が身に付きやすいです。

デザイン思考が根付いていない環境では、間違った発想だったらどうしようと躊躇してしまうこともあります。組織にデザイン思考が浸透していれば、アイデアを提案するハードルが低くなり、活発に発想が行われることになります。

イノベーションが生まれやすくなる

イノベーションを生み出すためには、ユーザー中心・顧客中心の考え方が重要です。徹底的にユーザーに寄り添うことによって、支持を得られて需要が高まっていく傾向があります。

デザイン思考は、ユーザーやクライアントのニーズを基盤としているため、イノベーションとの相性が良いのが特徴です。ニーズをとことん追求した質の高いプロダクトが生まれやすくなるのはもちろん、デザイン思考によってこれまでにない新しいプロダクトが生まれる可能性も秘めています。

多様な意見が受け入れられるようになる

デザイン思考はたった一人で行うものではなく、プロセスの中でブレーンストーミングなどを経て、様々な意見に触れることができます。

メンバーそれぞれの視点や価値観が異なり、多様な意見から一つのプロダクトを作る過程で、多様性を受け入れる姿勢が身に付くのがメリットです。多彩なアイデアや指摘が飛び交うことによって思考の幅が広がり、ニーズを広く捉えた革新的なプロダクトが生まれる可能性があります。

コミュニケーションが活発になる

デザイン思考を進めるプロセスで、メンバー同士のコミュニケーションが活発になります。メンバーそれぞれの考え方や価値観への理解が深まり、チームの結束力が高まるのもデザイン思考のメリットです。

この時、自由かつ公平に発言できる環境を整える必要があります。意見交換が活発に見えても、実際は役職者や年長者だけが発言している場合もあるでしょう。それでは活発なコミュニケーションとは言えず、チーム力の強化は難しいです。役職や年齢などに関わらず発言できるように配慮し、誰でもアイデアを言えることで、意見交流が活発になります。

デメリットにも注意が必要

デザイン思考には、以下のようなデメリットがあるので、注意が必要です。

  • ゼロから開発することには不向き
  • メンバーによってはアウトプットがありきたりになる
  • 理解を得るのに時間がかかる
  • 組織に浸透させるのが難しい

デザイン思考は、ニーズを元に思考を進めるので、何もないところから何かを開発することには向いていません。口コミやインタビューの結果などをヒントに発想を引き出し、新しい製品やサービスを生み出すときにデザイン思考が最適です。

また、デザイン思考を進める段階で生まれる発想は、メンバーの個性やスキルによる部分があります。メンバーによってはアウトプットがありきたりになるので、その場合イノベーションは起こしにくいです。

デザイン思考は、デザイナーが求められる思考と思われることもあり、メンバーに理解を得て、組織に浸透させるのは簡単ではありません。どのような思考なのか、どのようなメリットがあるのかなどを十分に共有し、焦らずじっくりと根付かせる姿勢が重要です。

ビジネスシーンにおけるデザイン思考の実践事例

ビジネスシーンにおいて、デザイン思考は日々の仕事に良い影響を与えるだけではなく、有名なプロダクトの誕生にも関わっています。ここでは、デザイン思考の実践事例を4つご紹介します。

Apple「iPod」

音楽プレイヤーとして世界的に人気のAppleの「iPod」は、デザイン思考によって生み出されました。音楽データの移行に不便を感じているユーザーに対して、どこでも音楽を聞けて、自分だけの音楽コレクションを作れるものという仮説を立てます。

コンパクトなデザインや直感的な操作感、音楽データのリンクなどのアイデアが生まれ、それらを元に試作を重ねた結果、今でも愛されるプロダクトとなっているのです。

P&G「ブラウン」

「ブラウン」は、洗剤や柔軟剤などでも有名なP&Gが手がける家電ブランドです。製品のひとつである電動歯ブラシは、デザイン思考によって誕生しました。

専用充電器が使いにくい、替えブラシの買い替えを忘れやすいなどのニーズを発見し、充電のしやすさ、替えブラシのリマインド機能などを開発しました。消費者の不満を解消した、ユーザー視点のプロダクトの代表例と言えるでしょう。

Spotify

音楽ストリーミングサービスの中で、多数のユーザーが世界で利用しているのがSpotiifyです。Spotifyでは、デザイン思考のプロセスのひとつである試作に力を入れています。

日々更新・登場するプレイリストは試作の象徴で、まず試してみて反応を検証し、新しい試みに生かすというプロセスを繰り返しているのが特徴です。

エアビーアンドビー

エアビーアンドビーは民泊紹介サービスで、自宅を宿泊施設として利用することを世界に広めました。パイオニア的なサービスではあるものの、決して順風満帆ではありませんでした。

ある時、宿泊施設の写真が良くなければ泊まりたいと思わないというニーズに行きつき、写真に力を入れるようになります。すると、宿泊者が大幅に増え、事業は軌道に乗っていったのです。

ホテルや旅館などは写真がきれいなことが当たり前ですが、民泊の場合は写真からわかる見た目が利用に影響するため、デザイン思考が大きな転換点になったと言えるでしょう。

まとめ

デザイン思考は、ユーザーやクライアントのニーズを土台として、思考を進めていきます。共感(Empathize)、定義(Define)、概念化(Ideate)、試作(Prototype)、テスト(Test)のプロセスを辿り、ニーズ調査や試作、テストを繰り返して新しい製品やサービスを生み出す思考法です。

デザイン思考を実践することによって、アイデアを発想しやすくなったり、イノベーションが生まれやすくなったりする一方で、定着に時間がかかることやアウトプットがありきたりになる可能性があることには注意しなくてはいけない。

有名なプロダクトの事例も参考にして、ぜひデザイン思考を取り入れてみてください。

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