自身を高めるパラレルキャリアとは?副業との違いや効果、注意点を解説
働き方やキャリアの考え方が多様化し、本業にこだわらない働き方も登場しています。複数のキャリアを形成することをパラレルキャリアと言い、スキルアップや夢の実現などを目指す働き方として注目を集めています。
この記事では、パラレルキャリアと副業の違い、注目を集めている背景、7つのタイプ、メリット、注意点まで詳しく解説します。
パラレルキャリアとは?
パラレルには、「平行」「並列」といった意味があります。パラレルキャリアという言葉においては、本業を第一の活動・キャリアとし、第二の活動・キャリアを行うことを指す用語です。
近年耳にする機会が増えてきましたが、アメリカでは日本よりも前に注目されていました。はじめてパラレルキャリアに触れたのは、経営学者として有名なピーター・ドラッカーです。『明日を支配するもの-21世紀のマネジメント革命』において、これからの働き方・生き方の一つとして言及しました。
本業と並行して第二のキャリアを形成するという触れ方をしていますが、第二のキャリアは必ずしも仕事だけではありません。明確な定義づけはされておらず、他の企業への所属、自営業、ボランティア、家事など、様々な実現の仕方があります。
パラレルキャリアと副業の違い
パラレルキャリアと副業は、同じものと捉えられがちですが、実際はそうではありません。大きな違いは目的です。パラレルキャリアは、スキルアップや人生の充実、社会貢献などを目的にします。ボランティアなど報酬が発生しない活動も含んでいるのが特徴です。
一方、副業は、収入が目的であり、本業と並行して別の仕事に取り組むことを指します。スキルアップや自己実現も目的とする場合もありますが、収入が発生する活動はあくまで副業です。
この違いは、パラレルキャリアを形成しようとする個人はもちろん、企業も理解しなければいけません。例えば、副業を禁止している場合、パラレルキャリア形成のためとはいえ、収入が発生する活動をしたときに問題になる可能性があります。スキルアップのためにパラレルキャリアを推奨したものの、従業員の多くが収入を目的とした副業をしていれば、あまり効果は得られないでしょう。
互いにパラレルキャリアと副業の違いを理解すること、企業としてそれぞれの定義づけを周知することが大切です。
パラレルキャリアが注目を集める背景
パラレルキャリアは、これまで根付いていた終身雇用、年功序列といった日本型雇用が変化しつつあることで、注目が集まっています。
働き手の意識が変化しており、推奨することは企業にとってもメリットが得られる可能性があります。ここでは、パラレルキャリアが注目を集めている背景をチェックしていきましょう。
ワークスタイルが多様化している
一昔前までは、終身雇用や年功序列といった日本型雇用が定着しており、正社員として働くことが一般的でした。徐々に契約社員や派遣社員、パート、アルバイトなど雇用形態が多様化しています。
さらに、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、テレワークも一般的になり、必ずしもオフィスに勤務したり、会社に所属したりする必要がなくなっているのが現状です。起業やフリーランスなどの選択肢も増え、自分に合ったワークスタイルを選びやすくなっています。
パラレルキャリアを実現するにあたって、ワークスタイルの幅が広がったのは追い風です。本業を持ちながら、相性の良いワークスタイルを選ぶことで、複数のキャリアを形成しやすくなっています。
企業にとってのメリットが増えている
働き方やワークスタイルが多様化し、パラレルキャリアに注目が集まっている中で、従業員のキャリア形成を後押しすることは、企業にとってもメリットが多いです。
今後さらにパラレルキャリアが注目されたときに、多様性を認めないことは従業員の離職やモチベーション低下につながる可能性があります。キャリアの実現をサポートすることで、従業員の定着率アップを期待できるでしょう。
パラレルキャリアを目指すことで、本業以外でも知識やスキル、経験を得られます。得たものを本業に還元できれば、企業の業績や競争力アップにつながるでしょう。
企業の経営破綻が増えている
世界的な企業においても、経営危機を迎えたり、倒産や破綻をしてしまったりするケースがあります。移り変わりが早く、将来の予測が難しい現代では、どの企業にも重大な局面を迎える可能性があると言えるでしょう。
そのため、終身雇用が根付いていた頃とは違い、企業に就職したから将来安泰ということはなく、一つのキャリアでは少なからず不安があります。パラレルキャリアは、複数のキャリアを形成することによって、リスクを軽減することが可能です。自身のキャリアについて考えるきっかけとして、パラレルキャリアは注目されています。
7つのパラレルキャリア
パラレルキャリアには、様々な形があります。主なタイプは、以下の7つです。
- 起業移行型
- 自己実現型
- キャリア保険型
- ワークライフブレンド型
- 社内還元型
- キャリア展開型
- ライフワーク活性型
タイプ別に特徴を押さえ、自分に合ったパラレルキャリアの形を考えてみましょう。
起業移行型
起業移行型とは、将来的な起業・独立を目指すタイプです。将来自分の店舗を持ちたい、会社を立ち上げたいという思いがあり、本業のかたわらで、活動を通してスキルや経験を積んでいきます。実績が積みあがることで、起業・独立に伴って信頼を得やすく、スムーズに移行できるのが魅力です。
自己実現型
自己実現型は、キャリアそれぞれに目的があり、やりたいことや叶えたいことの実現を目指すパラレルキャリアです。やりたいことが複数ある方にとっては、一つのキャリアだけでは叶えられないこともあります。第二の活動で、本業では成し得なかったやりたいことを選択すれば、様々な形での自己実現が可能です。
キャリア保険型
人によって、ライフステージの変化は様々で、予期せぬ形で本業を続けられなくなることもあります。キャリア保険型は、キャリアの変化に備えて第二の活動を育てるタイプです。経験や実績を積むことによって、いざというときに育ててきた活動を本業にできます。
ワークライフブレンド型
ワークライフブレンド型は、複数のキャリアを両立するタイプです。別々に考えるのではなく、本業から別の活動へ、別の活動から本業へ、知識やスキル、経験、人脈などを生かし、相乗効果で両方を育てていきます。
社内還元型
社内還元型は、第二の活動で得た知識やスキル、経験を本業に還元するタイプです。本業で携わっている業務に活用する場合もあれば、社内で新規事業を立ち上げるなど、様々な形で会社に還元していきます。
キャリア展開型
キャリア展開型は、本業と別の活動をリンクさせて、キャリアを広げていくタイプです。例えば、本業で環境に関わる仕事に携わり、ボランティアで環境保全活動に取り組むといったように、それぞれで得た経験を生かしながら、環境保全という一つの目標を軸に、キャリアの展開を目指します。
ライフワーク活性型
パラレルキャリアは、必ずしも目的があるとは限りません。本業とは別に、仕事や活動をすることで充実感を得るのも一つの形であり、ライフワーク活性型と呼びます。やりたいことにチャレンジすること、社会に貢献することなどから、欲求を満たすことが可能です。
パラレルキャリアのメリット
パラレルキャリアには、本業だけではなく、別の活動を並行して取り組むことによって、様々なメリットを期待できます。メリットを理解し、パラレルキャリアの実現を目指してみましょう。
- 様々な経験をできる
- つながりが生まれる
- マネジメントスキルが身に付く
- 社会に貢献できる
様々な経験をできる
本業とは別の活動をすることによって、本業では得られない様々な経験を得ることができます。得た経験は、仕事に生かされたり、生活を充実させたりするために役立つでしょう。本業を見直すきっかけ、趣味や夢を見つけるチャンスなどになることもあります。
つながりが生まれる
本業のみの場合は、従業員や取引先などある程度人脈は限られます。パラレルキャリアを実現すると、本業以外の様々な人と関わるチャンスが生まれます。新しい人脈は、人生や仕事へのヒントを得たり、ビジネスチャンスが生まれたりするなど、良いきっかけになるはずです。
マネジメントスキルが身に付く
パラレルキャリアを築くためには、本業をおろそかにせず、両立するのが前提です。上手く両立するためには、時間や費用などを管理しなくてはいけません。
空いた時間をどう使うか、収支はどうなっているかなどを管理する中で、マネジメントスキルが身に付きます。本業でリーダーになったり、起業・独立したりしたときに、スキルが生かされるでしょう。
社会に貢献できる
パラレルキャリアで取り組む活動によっては、社会貢献につながります。ボランティア活動に参加したり、団体を設立したりするなど、社会の課題に対して取り組めるのがメリットです。
本業が軸にあることで、経済面を安定させた上で、社会に貢献しながら、新たな経験を得られるようになりました。
パラレルキャリアの注意点
パラレルキャリアには多くのメリットがある一方で、負担が増えることは理解しなくてはいけません。また、企業や周囲の理解を得る必要もあります。ここでは、7つの注意点を詳しく解説します。
- 会社の制度を確認する
- 本業をおろそかにしない
- ゆとりを持って取り組む
- 周囲の理解を得られないことがある
- コストがかかる
- 企業にとって人材流出の可能性がある
- 続けないと意味がない
会社の制度を確認する
パラレルキャリアに注目が集まっているものの、企業によって取り扱い方は様々です。副業に含まれていて禁止されていたり、申請が必要だったりするなど、会社ごとにルールがあります。
明確に定められていない場合もありますが、許可されていると解釈すると、副業と認識されて規定違反になることもあるので、何よりまず確認が必要です。
本業をおろそかにしない
パラレルキャリアは、本業と別の活動を並行することが大前提です。基本的に、本業のすき間時間や休日などを活用するため、心身のエネルギーや時間の使い方は自分自身でコントロールしなくてはいけません。
別の活動に力を入れすぎて、体調を崩してしまう、本業が進んでいないとなれば、パラレルキャリアとは言えません。自己管理に気を付け、複数のキャリアを上手に両立しましょう。
ゆとりを持って取り組む
本業と別の活動どちらにもエネルギー全開で取り組んでいると、自由な時間や休息がなくなる場合があります。生活習慣が乱れて体調を崩したり、趣味や生活が後回しになったりすると、パラレルキャリアの維持はもちろん、ワークライフバランスの実現もできません。
充実感を得ることにだけ目を向けず、心と身体のゆとりも確保しましょう。週に1回は完全な休みにする、趣味の時間は削らないなど、無理せずに暮らしも大切にすることが重要です。
周囲の理解を得られないことがある
企業がパラレルキャリアを認めている場合でも、上司や同僚、部下などに理解を得られないケースがあります。社外で活動することは副業と思われることが多く、不信感を持たれたり、トラブルが起きたりするので注意しなくてはいけません。
本人がどのような活動をしているか伝えるのも方法のひとつですが、企業側がパラレルキャリアについて共有し、積極的に推進することも大切です。
コストがかかる
別の活動は、あくまで個人の活動であるため、費用は自己負担です。ビジネスに必要な資金や活動場所に行く交通費などがかかります。
事業を始める際は、費用をすぐに回収できるとは限りません。あらかじめ費用を確保しつつ、自己実現への投資と考えて、長い目で取り組んでいくことがポイントです。
企業にとって人材流出の可能性がある
従業員にとっては、パラレルキャリアは新たな気づきを得たり、自分自身を見直したりするきっかけになります。本当にやりたいことに気づいたり、別の活動に魅力を感じたりすれば、転職や起業、独立が選択肢に入ってくるでしょう。
企業にとっては、パラレルキャリアで可能性を見出した人材が流出するリスクがあります。禁止にした場合にも、柔軟なキャリアを形成できないことは離職の要因になるでしょう。パラレルキャリアを認めつつも、働き続けたい職場づくりや人材が入ってくる仕組みづくりなどに力を入れる必要があります。
続けないと意味がない
パラレルキャリアを築くためには、本業も別の活動も続ける必要があります。合わなかった活動を無理に続ける必要はありませんが、継続して形にすることがキャリア形成と言えるでしょう。知識やスキル、経験を積むためにも継続が必要なので、続けることを意識して取り組むことが肝心です。
まとめ
パラレルキャリアは、本業と別の活動で複数のキャリアを形成する、今注目のスタイルです。様々な経験からスキルアップや視野の広がりを期待でき、新たな人脈も生まれます。時間やお金の管理能力を身につけたり、社会貢献を果たしたりすることも可能です。
パラレルキャリアを目指す際は、まず会社の規定を確認しましょう。心身を休める時間も確保し、本業と両立しながら複数のキャリアの形成を目指してみてください。