ワークエンゲージメントとは?重要性や高め方もわかりやすく解説
多様な働き方が社会に広まっている昨今、仕事をする上で心身の健康を求める人が増加傾向にあります。
従業員の仕事に対する心理状態を示すHR(人事)概念が、ワークエンゲージメントです。仕事に対して従業員がポジティブな心理状態で取り組むことができれば、企業の離職率の低下や、生産性のアップが期待できます。
つまりワークエンゲイジメントを高められれば、企業にとってさまざまなプラスの効果が得られるのです。
本記事では、「ワークエンゲージメントとはどのようなものか知りたい」「ワークエンゲージメントを高めることで得られる効果や高める方法を知りたい」と思っている方に向け、ワークエンゲージメントの概念や3つの構成要素、その高め方について紹介します。
ワークエンゲージメントとは?
ワークエンゲージメントとは、仕事におけるポジティブで充実した心理状態のことを指します。ワークエンゲージメントが高い従業員の特徴は、仕事に誇りややりがいを感じている、熱心に取り組んでいる、仕事から活力を得ているなどです。
ワークエンゲージメントは3つの要素で構成されている
ワークエンゲージメントの概念は、オランダ・ユトレヒト大学のシャウヘリ教授が提唱しました。次の項目で詳しく触れていますが、ワークエンゲージメントを「活力」「熱意」「没頭」の3要素に分け、3つが揃った状態をワークエンゲージメントが実現されている状態と定義しています。
エンゲージメントという言葉は、近年さまざまな分野で使われており、急速に注目を集めています。
新聞や雑誌、インターネット、研究、書籍などで「エンゲージメント」が使用された件数は概念が認識された当初から約10倍に増えているとされ、ワークエンゲージメントについても関心が高まっていると言えるでしょう。
知っておきたいのは、ワークエンゲージメントの概念は国によって異なる部分があることです。それぞれの国民が持つパーソナリティは異なるため、例えばアメリカと日本ではワークエンゲージメントが高い人の特徴が共通しているとは言えません。
日本人はどちらかというと自分自身に厳しい傾向があり、ワークエンゲージメントが高くても表面に出さない場合が多いです。調査ではワークエンゲージメントが低い場合でも、実は高いということもあるので、国民性を理解した上で従業員を理解する必要があります。
ワークエンゲージメントと、関連する概念の違い
上述したように、ワークエンゲージメントはオランダ・ユトレヒト大学のシャウヘリ教授が提唱し、3つの構成要素に分けられています。
- 活力
- 熱意
- 没頭
3つが揃った状態をワークエンゲージメントが高い状態と位置づけているので、まずはそれぞれがどのような状態かを理解していきましょう。
活力
活力は、仕事に取り組む上で高いエネルギーを持っている状態です。前向きに業務に取り組んだり、活発に行動したりできている人は「活力」を持ち合わせていると言えます。
また、活力には、回復力や粘り強さも含まれています。失敗してしまった時や上手く進まない時などに、あきらめずに粘り強く取り組める、落ち込んだ時に上手く整理して復活できるなど、壁にぶつかっても継続できる人は「活力」を備えていると言えるでしょう。
熱意
熱意は、仕事に対する誇り、やりがいなどを備えている状態です。仕事や企業の目的・ビジョンなどを理解し、それを実現するために熱意を持って取り組んでいる人が「熱意」に当てはまります。
没頭
没頭とは、仕事に集中できている状態のことです。ある仕事に取り組む際に、他の仕事やプライベートのことなどを考えていると、集中できないことがあります。仕事以外にも考えるべきことがある状況であっても、仕事をする瞬間は雑念をなくし、集中している状態が望ましいです。
上記のように、「活力」「熱意」「没頭」を備えている人はワークエンゲージメントが高いと言えます。「仕事に対してやる気や誇りを持ち、高いエネルギーで仕事に集中している人」などが主な例です。
ワークエンゲージメントはなぜ重要なのか?
ワークエンゲージメントが経営者や企業にとって重要な理由とは、従業員のメンタルヘルスの向上によって生産性の向上や離職率の低下、顧客満足度の向上といったさまざまな効果が得られることにあります。
以下、ワークエンゲージメントの向上で得られる5つの効果について、ポイントごとに確認していきましょう。
1・生産性の向上につながるから
ワークエンゲージメントの向上は、従業員の仕事に対する意欲をアップさせ、パフォーマンスの向上へとつながります。それにより、企業の生産性や業績が高まるという効果が得られます。
従業員の仕事へのモチベーションが高い状態であれば、新たなアイデアが出たりビジネスチャンスにつながったりなどの副次効果も期待することが可能です。
2・メンタルヘルスの向上につながるから
ワークエンゲージメントが高まっている従業員は、心理的なストレスや負担が少ないケースが多くなっています。心理的ストレスや負担が少なければ心に余裕を持ちながら働くことができ、健康も維持しやすくなります。
組織にとっては、心身の不調による欠員が出たり、生産性の低下が起きたりする心配が少ないのがメリットです。
3・CS(顧客満足度)の向上が期待できるから
ワークエンゲージメントが高まることによって、顧客満足度の改善につながる傾向があります。
厚生労働省の調査結果によると、従業員のワークエンゲージメントが向上するにつれ、顧客満足度も上がったと認知している企業が多く存在しています。(参照:労働経済白書(令和元年版)| 厚生労働省)
従業員の仕事にやりがいを持って活動する姿勢や、自社のサービス・商品を自信と熱意を持って説明する姿に対し、顧客は信頼感を抱くのです。そのため、ワークエンゲージメントの向上は継続的に行うべきことだと言えるでしょう。
4・離職率の低下を期待できるから
個人の幸福感や仕事への自己効力感を実感することによって、離職率の低下を期待できます。長く勤めたいという気持ちが生まれやすく、定着率がアップするでしょう。
従業員の定着率がアップすれば、採用に必要なコストを抑えることもできます。
人材不足が叫ばれるなかで、ワークエンゲージメントを高めることは企業の競争力を維持するためにも重要です。定着率の高い企業ということが広く知られれば、人材獲得にも良い影響があるでしょう。
5・組織全体の利益につながるから
生産性の向上や顧客満足度の向上、従業員のメンタルヘルスの向上による離職率低下は、最終的に組織全体の利益として還元されます。
従業員が長く定着することによって、一緒に働く上司や部下への信頼感が高まり、従業員のコミュニケーションが活発になるという効果が得られます。それによって社内のチームワークもアップし、社内の雰囲気向上によって新規の人材が定着しやすくなるでしょう。
つまり、ワークエンゲージメントを向上させることによって、組織にとっての継続的な利益へとつながるのです。
ワークエンゲージメントの尺度と測定方法
ワークエンゲージメントに関する課題を計測できる主な尺度は、以下の3つです。
- MBI-GS
- OLBI
- UWES
MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)
MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)のBは「バーンアウト」です。バーンアウトとは燃え尽き症候群のことであり、心身の疲弊によって仕事への興味・関心が失われている状態で、ワークエンゲージメントとは対極の位置にあります。
MBI-GSは、バーンアウトかどうかを測定することによって、ワークエンゲージメントを明らかにする尺度で、測定項目は疲労感に関する5項目、シニシズム(社会の風潮を冷笑する態度)に関する5項目、労働者の職務効力感に関する6項目です。
これらの数値が高ければバーンアウトの傾向が強く、低ければバーンアウトの傾向が低くワークエンゲージメントが高い水準にあると言えます。
OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)
OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)もMBI-GSと同じく、バーンアウトを元にワークエンゲージメントを測定する尺度です。
主な計測項目は「疲弊」と「離脱」の2つであり、「疲弊」が高いほどエネルギーを失っている、「離脱」が高いほど関心が低くなっていると言うことができます。
これらの2つの項目に関する質問に回答してもらうことで測定し、その結果値が低ければ、ワークエンゲージメントが高い状態です。
UWES(Utrecht Work Engagement Scales)
UWES(Utrecht Work Engagement Scales)は、ワークエンゲージメントを直接測定する尺度で最も活用されている方法です。3つの構成要素「活力」「熱意」「没頭」に関する質問によって、ワークエンゲージメントを計測します。
要素ごとの数値や総合的な結果によって、安定した計測が可能です。日本向けに開発されたUWES、設問を絞った短縮版UWESなどが有名で、計測に用いられています。
ワークエンゲージメントの低下がもたらすリスクとは?
ワークエンゲージメントの低下は、以下のリスクをもたらします。
モチベーションや生産性低下のリスク
ワークエンゲージメントの低下は、従業員の職務に対する活力や熱意といった感情が低下している状況を示します。そのため従業員の仕事に対するモチベーションが低下し、仕事の生産性も低下するというリスクが高い状態です。
従業員のモチベーションや生産性が低下すると、離職率の増加や企業の利益の低下といったリスクにつながります。
離職率の増加につながるリスク
ワークエンゲージメントが低下している状況は、従業員が仕事への働きがいを失くし、自社への愛着も薄くなっていることを意味します。そのため、離職率が上がり、人材不足に陥りやすくなるリスクが高まっている状況です。
従業員が離れてしまえば、新たな人材を採用したり人材育成をしたりするコストが必要になることから、企業の負担が増加します。
企業利益の低下のリスク
ワークエンゲージメントの低下は企業利益の低下につながります。従業員の定着期間が短いことで従業員同士のチームワークが低下し、社内の雰囲気も悪くなってしまいます。
つまり、ワークエンゲージメントの低下は、組織にとっての利益が下がるリスクがあるということなのです。
ワークエンゲージメント3つの高め方
ワークエンゲージメントを高めるためには、仕事と個人といった資源を見直すことが大切です。職場の環境や個人の状態を整えることでワークエンゲージメントを高められます。
また、仕事の資源と人材の資源の両方を確保できるツールの使用もおすすめです。資源の見直し方について、具体的な方法を押さえていきましょう。
仕事の資源を見直す
仕事の資源とは、仕事量や仕事の負担、モチベーションなどに関わる要因です。
仕事量が過剰だとエネルギーを維持するのが難しく、裁量権がなければ自己効力感が失われてしまいます。
仕事の資源を見直すには、仕事量の適正化、上司や同僚などからのサポートおよびコーチング、研修やスキルアップの機会増加などの方法があります。業務に適正なツールを使用することや、福利厚生の内容充実なども効果的です。
無理なく働けること、やりがいを感じられることなどによって、ワークエンゲージメントが高まります。
個人の資源を確保する
個人の資源は、人材それぞれにある内的な要因です。心理的ストレスやモチベーション、自己効力感などによって、仕事への思いや取り組み方が変わってきます。
具体的には、ストレスを軽減できるようにコミュニケーションを活性化したり、仕事へのモチベーションを向上できるように適切な評価・フィードバックをしたりするのがおすすめです。
心に余裕を持ちながら、自分自身が会社に貢献している実感を得られることで、ワークエンゲージメントの向上を期待できます。
資源確保のためのツールを導入する
仕事の資源と個人の資源を同時に確保できるものとして、オススメなのが社内コミュニケーションツールの導入です。
従業員同士のコミュニケーションが活発になることで、社内のチームワークや仕事の生産性アップが図れます。業務進捗の可視化や仲間同士での相談もしやすくなるため、ワークエンゲージメント向上につながります。
まとめ
ワークエンゲージメントの向上は社員のモチベーションや生産性のアップにつながり、離職率の低下や顧客満足度の向上など、組織全体の利益になります。
ワークエンゲージメントを強化するためには、仕事の資源と個人の資源の両方を見直すことが必要で、そのためには従業員同士のコミュニケーションを活発にするための、ツールの導入が効果的です。
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