人事領域とマーケティング領域、双方で活かせるリテンションとは? | Talknote Magazine

人事領域とマーケティング領域、双方で活かせるリテンションとは?

ビジネスにおいて、人材や顧客の流出は死活問題です。何らかの理由で人材が退職してしまったり、顧客が他社に流れてしまったりすると、経営や事業に悪影響が出てしまいます。そこで注目されているのがリテンションという施策です。

この記事では、リテンションの定義を始め、人事領域とマーケティング領域それぞれのリテンション、活用メリット・事例を解説します。

リテンションとは?

リテンション(retention)とは、「保留」「保持」「記憶」といった意味がある言葉です。ビジネスにおいては、「保持」「維持」といった意味から、人材や顧客の流出を防止する施策を指します。

一般的には、組織に属する人材の定着を目指す取り組みをリテンションとすることが多いです。マーケティングの分野においては、既存顧客との関係性を維持する施策、他社への流出を防ぐ施策として、リテンションが活用されています。

日常的なフォローもリテンションのひとつであり、これまでも流出を防ぐ取り組みは行われていました。近年、施策のひとつとして注目されている背景には、人材不足があります。少子高齢化による労働人口の減少により、多くの企業が人手不足に悩んでいるのが現状です。

また、転職や独立・開業といった一つの会社への所属にこだわらない働き方も一般的になりつつあり、対策を講じないと人材は流出しやすくなります。マーケティングにおいても、魅力的な商品が次々に登場する中で、顧客を安定して確保するのは簡単ではないことからリテンションの必要性が増しており、戦略として取り組む企業が増えています。

人事領域におけるリテンション

人事領域においては、人材の転職や退職を防止するためにリテンションを行います。人材に対して、働きがいを与えたり、納得できる待遇に見直したりするのが主な方法です。ここでは、人事で行うリテンション施策を5つご紹介します。

  • 能力開発支援
  • 報酬の見直し
  • 労働環境の改善
  • コミュニケーションの活性化
  • 他部署・支社への異動

能力開発支援

意欲のある人材は、知識やスキルなどを高められる環境を求める傾向があります。成長するチャンスがない環境では、可能性を広げられる場所へと離れていってしまうでしょう。

能力開発支援は、人材が持っている能力を高めるための施策です。通学や通信教育、OJT、研修などを企業が積極的に推奨し、適宜補助することで、成長したい人材の流出を防ぎやすくなります。高いスキルを身につけた人材が多くなれば、企業の業績や業務効率にも良い影響を与えるでしょう。

報酬の見直し

やりがいやワークライフバランスも大切ですが、充実した人生を送るためには報酬も重要な要素です。労働条件や働きぶりに見合った報酬が確保されていなければ、待遇の良い職場を求めて人材は離れていきます。

ここでの報酬とは、給料、ボーナス、インセンティブ、福利厚生などを指します。経験や評価に合わせて給料を見直す、ボーナスを支給する、成果に応じたインセンティブを制度化するといった取り組みをすることで、働きに応じた報酬をもらえる職場として、人材の満足度が高まるのではないでしょうか。

労働環境の改善

成長する機会や報酬だけではなく、働きやすい職場かどうかも離職の原因になるポイントです。残業や休日出勤が常態化していたり、生活に合わせた柔軟な働き方ができなかったりすると、人材は定着しづらくなってしまいます。

残業・休日出勤の改善、各種休業制度の設置、在宅勤務や時短勤務への対応など、それぞれの事情を持つ人材が気持ちよく働ける環境を整えましょう。そうすることで、ワークライフバランスを実現しながら、長く働いてくれるはずです。

コミュニケーションの活性化

仕事をするにあたって、人間関係も大切な要素です。仕事に支障がなければ問題ないという人もいるかもしれませんが、せっかくならコミュニケーションを取りながら気持ちよく働きたい人が多いのではないでしょうか。

コミュニケーションが不足し雰囲気が悪かったり、仕事に必要なやり取りが上手くいかなかったりすると、従業員の満足度は下がってしまいます。ネガティブな発言が増えた、発言が減ったといった特徴のある従業員は、離職を考えている可能性が高いです。

社内コミュニケーションを活性化するためには、心理的安全性の確保に取り組みましょう。心理的安全性とは、安心感や共感を感じられる雰囲気・空気感のことです。これが担保されている職場では、自分の意見を発言しやすく、ありのままの自分で話すことができるので、自然とコミュニケーションが増えていきます。

キャリアや年齢を問わず意見を尊重する、日常的な会話を意識的にする、ランチミーティングといった話す機会をつくるなど、自由に話せる環境をつくっていきましょう。チームワークが良くなれば、この職場でこの仲間と長く働きたいという思いが芽生えてくるのではないでしょうか。

他部署・支社への異動

同じ部署に長く在籍していると、新しい業務や人間関係などの刺激が少なくなり、モチベーションが下がって転職を考えるケースがあります。

転職することなくチャレンジや環境の変化を実現するために、他部署・支社への異動をしやすくするのもリテンションのひとつです。定期的な異動を行ったり、希望を受け付けたりすると、自社内で環境を変えることができます。

新鮮な気持ちで働けたり、新しい知識やスキルを身に付けられたりすることは、会社に長く在籍する理由になるはずです。

マーケティング領域におけるリテンション

マーケティング領域においては、顧客の流出を避けるためにリテンションが必要です。適切に施策を行うことで、売上アップや維持を実現できます。ここでは、マーケティングで実践したいリテンション施策を3つ解説します。

  • 既存顧客へのフォロー
  • 休眠顧客へのアプローチ
  • 顧客満足度を高める取り組み

既存顧客へのフォロー

既に商品・サービスを利用・購入してくれている顧客でも、さらに良いものが登場すれば離れてしまう可能性があります。継続利用やリピート購入を促すためには、こまめなフォローが重要です。

メールマガジンを配信したり、キャンペーン情報を通知したりするなど、顧客の年齢や購入頻度など属性に合わせた有益な情報を伝えることで、また利用・購入したくなるフォローをしましょう。

また、一度利用・購入をやめてしまった離反顧客への働きかけも大切です。顧客の行動を分析した上で、興味・関心を引くアプローチを行い、再利用・購入につなげます。こまめなフォローで満足度が高まれば、顧客との関係性を再構築できるでしょう。

休眠顧客へのアプローチ

商談や取引など関係性があったものの、現在は動きがない顧客を休眠顧客と言います。検討期間が長くなったり、購買までのプロセスが複雑だったりすると、利用・購入に至らず放置されるケースが多いです。

休眠顧客を放置していると、いざ必要になったときに他社に流出してしまうリスクがあります。流出を防ぐためには、メールマガジンやダイレクトメール、電話営業などでアプローチするのが一般的です。メールやダイレクトメールはアプローチしやすく、受け手にとっても気づきやすいため、多く用いられています。過去にやり取りしたことがあれば、電話で近況を聞くのも効果的な手段です。

顧客満足度を高める取り組み

商品・サービスそのものやサポートに不満があれば、もっと良いものが出てきたときに顧客は流出しやすくなります。満足度が高い場合は、継続して利用してもらったり、関連商品を購入してもらったりするなど、成果を期待できる場合が多いです。

顧客満足度を高めるためには、顧客がどのようなものに対して満足するのかを知るところから始めましょう。アンケートやヒアリング、データなどから、満足度の高いものの特徴や自社商品・サービスの現状を把握します。自社商品・サービスの課題を改善することで、満足度が向上するでしょう。

商品そのものではなく、サポートや対応などに課題があるケースも考えられます。カスタマーサポートを強化するなど、顧客に合わせた満足度アップの取り組みを実施していきましょう。

人事領域におけるリテンションを行う目的と活用メリット

人事領域において、リテンションを行う目的と活用メリットは、以下の通りです。

  • 採用・育成コストの削減
  • ノウハウを蓄積できる
  • 従業員のモチベーションが高くなる

目的とメリットを知ることは、リテンションを明確に実施するために欠かせません。一つひとつのメリットを理解していきましょう。

採用・育成コストの削減

人材を採用し育成するためには、費用や時間など莫大なコストがかかります。採用には転職エージェントへの費用や求人の掲載料、育成には研修・OJTの運営費などが発生するだけではなく、人材を獲得・戦力化するまでコストの源泉となる生産性が落ちやすいです。

コストが発生するのは離職が原因なので、リテンションで離職率が低下すれば、大幅にコストを削減できます。時間や工数なども削減されるため、業務効率も高くなるでしょう。

ノウハウを蓄積できる

人材が流出すると、会社で培ったノウハウが漏れるリスクがあります。影響を可視化することは難しいものの、優秀な人材が流出するほど、自社の業績が落ちたり、競合他社の業績が伸びたりする可能性があるでしょう。

人材が定着するようになると、貴重なノウハウが流出するリスクが減るのはもちろん、自社にノウハウが蓄積されていきます。部下にスキルが引き継がれたり、有益なデータが増えたりすることで、長期的な発展を期待できます。

従業員のモチベーションが高くなる

リテンションを実施することで、報酬や労働環境、コミュニケーションなど、離職の原因になりうる課題が改善されます。

従業員にとっては、評価に見合った報酬を得られたり、働きやすくなったりすることで、満足度が高まるでしょう。会社から大切にされている気持ちも伝わり、日々の業務へのモチベーションが上がるのもメリットです。やる気のある従業員が増えれば、業務効率や生産性も上がり、企業の業績にも良い影響を与えるでしょう。

人事分野におけるリテンションの活用事例

リテンションを実施する際、他社の事例を参考にすることも大切です。ここでは、3つの事例を詳しく見ていきましょう。

  • サイボウズ株式会社
  • レオパレス21
  • 三幸グループ

サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社は、『kintone』などのソフトウェア開発で有名な企業です。リテンションのひとつとして、社内部活動を推奨しています。

複数の部署に属する5人以上の部員がいること、年数回の活動報告書を提出することを条件に、様々な部活動を設立することが可能です。部署間のコミュニケーションや連携を深めることによって、コミュニケーション不足の解消や業務効率の向上などを実現し、リテンションにも効果を発揮しています。

レオパレス21

レオパレス21は、不動産賃貸やリゾート施設の運営などの事業を行っている企業です。管理職の離職が多かった状況に対して、支店長クラスの意識改革に取り組みました。

マネジメント知識・能力の違いが離職に影響していた状態を改善し、離職率の低下や有給取得率の向上を実現しています。

三幸グループ

三幸グループは、学校事業や美容事業、介護事業など幅広い事業を展開しています。リテンションの取り組みは、キャリアチャレンジ制度と三幸プロデュース制度です。

キャリアチャレンジ制度は、2年間同じ部署に在籍している場合新たな配属先を希望できる制度で、自社の中で活躍の場を移すチャンスがあります。

三幸プロデュース制度は、年に1回新規事業や業務改善案などを提案できる制度です。やりたいことや変えたいことを発信できる制度になっており、やりがいを持って取り組むきっかけになるのではないでしょうか。

まとめ

リテンションは、人事やマーケティングで使われる言葉で、人材や顧客の流出を防ぐために重要な取り組みです。採用コストの削減やノウハウの蓄積、モチベーション向上など、様々な効果を期待できます。具体的な方法や他社の事例を参考にして、リテンションを実施しましょう。

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