人材育成に活用できるリスキリングとは? | Talknote Magazine

人材育成に活用できるリスキリングとは?

人材育成に関する手法は数多くありますが、近年注目されているリスキリングをご存じでしょうか。あまり馴染みがない方が多いものの、最新技術の登場や働き方の多様化などを背景に、ニーズが高まっている概念です。

この記事では、人材育成に活用できるリスキリングについて、定義や注目されている理由、メリット・デメリットまで詳しく解説します。

リスキリングとは?

リスキリングとは、人材育成に関わる概念のひとつです。ここでは、定義から始め、注目されている理由や導入する流れ、他の概念との違い、事例を順に解説していきます。

リスキリングの定義

リスキリングとは、英語で「Reskilling」であり、スキルを付け直すこと、学び直すことと表現されます。2021年に経済産業省が発表した資料によると、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。

リスキリングが求められる背景にある様々な変化に対応するために、スキルを獲得する・させることがリスキリングです。

リカレント教育やOJTとの違い

リスキリングが注目されている理由に触れる前に、他の概念との違いを理解しておきましょう。

混同しやすい概念のひとつがリカレント教育です。リカレント教育とは、教育を行う期間と就労する期間を繰り返すことによって、スキルの習得を目指す手法で、職を離れる期間が発生します。一方、リスキリングは、企業に在籍し勤めながらスキルの習得を目指すという点で両者は異なる手法です。

OJT(職場内での教育訓練)とも違いがあります。OJTで取り扱うのは職場にある既存の仕事で、それらの業務を行いながらスキルを身につけていくのが特徴です。リスキリングは、既存の業務にこだわるものではなく、新しく行う仕事によってスキル習得を目指す場合もあります。

スキルを身につけるという目的は共通しているものの、そのための過程や対象などが異なることを覚えておくと良いでしょう。

リスキリングが注目されている理由

では、リスキリングはなぜ近年注目されているのでしょうか。経済産業省の同発表によると、Google検索において、英語の「Reskilling」は2020年5月時点で812,000件、2021年2月で3,870,000件に対し、日本語の「リスキリング」は前者が1,470件、後者が777,000件となっています。日本でも徐々に注目されているものの、海外の動きには遅れを取っている状態です。

Amazonやウォルマートなどの海外企業は既に取り組んでおり、世界経済会議(ダボス会議)で3年連続でセッションが組まれたり、トランプ政権が労働者のリスキリング機会提供を誓約したりするなど、様々な動きが出てきています。

一方、日本では、日立製作所や富士通、住友商事などの大手企業を初めとして、少しずつ取り組みが現れている状況です。

日本で急速に注目を集めた理由には、DXへの対応が挙げられます。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、社内のデジタル化を進める必要性が高まっています。デジタル技術を活用するためには、それらを扱うスキルが必要になり、新たなスキルを習得するリスキリングが必要と考えられたのです。

ここで注意したい点として、デジタル技術を直接扱う職種のみに対するものではありません。DX時代ではデジタル化を通してビジネスプロセスを根本から変える取り組みが求められるため、営業職や事務職などあらゆる人材にリスキリングが必要になります。

リスキリングを導入する流れ

リスキリングは、一般的に以下の流れで導入されるケースが多いです。

  1. 習得を目指すスキルを決める
  2. リスキリングの対象となる従業員や組織を決める
  3. 自社または外部機関によってリスキリングを実施する
  4. 継続的に実施する

まずは、リスキリングによって習得を目指すスキルを決めます。既に習得している人材が多いスキルや自社の課題解決への関わりが薄いスキルは避けて、自社に必要なスキルを選定するのがポイントです。

次に、リスキリングの対象となる社員や組織を明確にしましょう。特定のスキルが不足している社員群や部署に対してリスキリングを実施すると、リスキリングが成功しやすくなります。

リスキリングを実施する際は、必ずしも自社でコンテンツを作成する必要はありません。外部機関のサービスを利用するのも方法のひとつです。一度だけの実施ではスキルを身につけるのは難しいので、継続的にリスキリングを実施する必要があります。

リスキリングの事例

リスキリングの事例は、海外企業が多いのが現状です。アメリカの通信業界大手のAT&Tは、通信業界の変化に対応できる人材を増やすために、いち早くリスキリングを始めたと言われています。従業員10万人を対象にリスキリングを実施し、参加した従業員の昇進率アップ、退職率ダウンに成功しました。

Amazonでは、2025年までに米アマゾン従業員10万人をリスキリングすると発表し、リスキリングによる非技術系人材の技術職への移行も行っています。マイクロソフトでは、自社ではなく、新型コロナウイルス感染症に伴う失業者2,500万人に無償でリスキリングを行いました。

日本では、日立製作所が国内グループ企業全社員を対象にしたDX基礎教育、住友商事が1,000人にオンライン教育3時間研修を行うなど、事例が増えつつあります。

リスキリングのメリット

リスキリングのメリットは、以下の4つです。

  • アイデアが生まれやすくなる
  • 業務を効率化できる
  • 企業の文化や社風を守れる
  • 人材採用や育成のコストを抑えられる

メリットを理解して、自社にどのような良い影響があるかをイメージしましょう。

アイデアが生まれやすくなる

従業員が新しいスキルを習得すると、業務の捉え方や考え方が変化し、アイデアが生まれやすくなります。

商品・サービスを開発するときに独創的な発想を取り入れたり、業務の進め方を新たな形にしたりするなど、社内に良い変化を生み出せるでしょう。時代の変化が目まぐるしくなっているため、アイデアを取り入れながら変化し続ける姿勢が企業に求められます。

業務を効率化できる

リスキリングで習得したスキルによっては、業務の効率化につながります。例えば、データ活用のスキルが身に付けば、これまで検討や調査にかかっていた時間が短縮され、他の業務に使える時間が増えるでしょう。

少ない時間で質の高い仕事ができると、残業や休日出勤が減り、従業員のワークライフバランスの実現も期待できます。

企業の文化や社風を守れる

リスキリングは、企業の文化や社風を継承するためにも重要な役割を果たします。企業をよく知っている既存の従業員をリスキリングの対象にすることで、これまで培ってきた企業理解と新しいスキルを融合することが可能です。

その姿を見た経験の浅い人材をリスキリングに巻き込みやすくなり、スムーズに取り組みを進めやすくなります。

人材採用や育成のコストを抑えられる

DX時代に合った人材を新たに採用・育成するのも方法のひとつですが、労働人口が減少する現代ではあまり現実的ではありません。

リスキリングは、既存の人材に働きかけるものであり、新規採用コストを抑えつつ、一から育てるよりもスムーズに育成できます。

リスキリングのデメリット

リスキリングを実践するためには、メリットだけではなく、デメリットも理解しなければいけません。ここでは、2つのデメリットを詳しく解説します。

スキル取得による転職リスク

リスキリングを実施することによって、従業員は新たなスキルや技術を習得します。これまでにできなかったことができたり、アイデアが生まれたりすることは、自社の製品開発や業務遂行に貢献するでしょう。

しかし、可能性が広がった従業員は、よりスキルを生かせる職場や待遇の良い職場への転職を考える場合があります。適切な対応ができていないと、優秀な人材が流出してしまうので注意が必要です。

技術職への移行、待遇の見直しなどをあらかじめ共有していれば、リスキリング後も自社で活躍してくれるでしょう。

継続的に取り組む時間と手間がかかる

リスキリングを実施するためには、時間と手間、コストがかかります。習得を目指すスキルや従業員の選定やアウトソーシングの検討・調整に時間がかかり、実施するためには費用が必要です。外部機関での研修費用や資格取得費用の補助、書籍購入など、あらかじめ予算を確保しなくてはいけません。

リソースや費用を捻出できないからといって、単発で終わらせてしまうと恩恵をそれほどないでしょう。リスキリングに活用できる人的・金銭的コストを確保した上で、効果的なリスキリングを実施する必要があります。

リスキリング導入時に押さえておきたいポイント

リスキリングを成功させるためには、ポイントを押さえて導入することが大切です。

  • 社員の声を取り入れる
  • アウトソーシングを活用する
  • 継続的に取り組める仕組みをつくる

上記のポイントを押さえて、リスキリングを効果的に導入しましょう。

社員の声を取り入れる

いきなりリスキリングを実施すると発表しても、何をするのか、何が変わるのかがわからない従業員は混乱してしまいます。もし実施できたとしても、現場の声と合わない内容では十分な効果は得られません。

リスキリングを導入するためには、まず社員の声を取り入れましょう。業務で困っていることや改善したいことから必要なスキルを導き出せば、効果的なプログラムやコンテンツでリスキリングを実施できます。

リスキリングがどのようなものかわからない社員に対しては、説明会やミーティングなどで説明する機会を設け、協力して取り組める体制を整えましょう。

アウトソーシングを活用する

リスキリングは、教育に活用するコンテンツやプログラムを使用することが多いですが、自社開発しなければならないと誤解している企業が多いようです。

デジタル技術に強い企業でないと内製は難しく、その時点でリスキリングを断念してしまうケースがあります。

実際は、コンテンツを社内開発しなければならない決まりはなく、アウトソーシングを活用するのが効率的です。社内開発に時間がかかったり、完成したものの質が低かったりする心配が少なく、費用と時間を節約してリスキリングを実施できます。

自社で行いたいリスキリングとの相性は重要なので、習得させたいスキルを参考に、最適なコンテンツを提供している外部サービスや専門家を活用しましょう。

継続的に取り組める仕組みをつくる

一度の研修やコンテンツ学習では、スキルがしっかり身に付かないケースもあります。そのため、単発で終わるのではなく、継続的に取り組める仕組みづくりが重要です。

プログラムづくりも大切ですが、従業員のモチベーションを管理する必要があります。目的が曖昧だったり、上手く習得できなかったりすると、意欲が低下する可能性が高いです。リスキリングを行う目的を明確にしたり、インセンティブを設定したりすると、取り組む意味が見いだされ、スキル習得までリスキリングを実施しやすくなります。

まとめ

リスキリングとは、DX時代に求められる概念で、新しいスキルの習得によって時代の変化に対応する目的があります。実施することによって、新しいアイデアが生まれたり、業務を効率化したりできる一方で、スキル習得による転職リスクや時間・コストには注意しなければいけません。

導入する上では、社員の声を取り入れ、アウトソーシングを活用しながら継続的に取り組むのがポイントです。導入の流れや事例などもチェックして、リスキリングの導入を検討してみましょう。

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