パルスサーベイとは? メリットと注意点、実施手順をご紹介
従業員の満足度を調査することは、企業の実態を知ることやフォローの必要性に気づくことなどに役立ちます。調査の手段はいくつかありますが、パルスサーベイという手法がおすすめです。
この記事では、パルスサーベイの特徴や導入メリット、注意点の解説に加えて、具体的な質問例や実践事例までご紹介します。
パルスサーベイとは?
パルスサーベイとは、「パルス(脈拍)」「サーベイ(調査)」を組み合わせた言葉です。脈拍を計測するように組織と個人の関係性を図る調査手法で、短期間で反復して調査を行います。
パルスサーベイを行う目的は、短期間で調査を行い、スムーズに関係性の改善を図ることによる従業員満足度の向上です。高頻度で調査を実施することによって、課題が大きくなる前に対処できたり、フォローをすばやくできたりします。
これまでは、高頻度で従業員調査を行うのは、難しい側面がありました。担当者が設問を設計したり、実施後に分析したりする手間・負担があり、週1回や月1回の頻度でも、通常の業務と並行して行うのは簡単ではありません。
近年、テクノロジーの発達が著しく、ビジネスシーンに様々なツールが登場しています。パルスサーベイにもその動きがあり、「オービタスサーベイ」「カオナビ」「スマカン」などツールの種類は多種多様です。設問の作成・実施、結果の分析などを自動化できるようになり、担当者の負担が軽減され、パルスサーベイを行いやすくなったことで注目が集まっています。
パルスサーベイの特徴
パルスサーベイの特徴は、週1回または月1回など、高い頻度で従業員調査を行うことです。設問数は5~15問ほどと少なく、短いスパンでリズムよく回答してもらいます。従業員にとっては取り組みやすく、企業にとっては最新のデータを逐一収集できるのが特徴です。
パルスサーベイと対照的な調査を「センサス」と言います。センサスとは、年に1度ほどの頻度で行う従業員調査です。パルスサーベイとの違いは、実施の頻度だけではなく、設問数が50~150問と、ボリュームが大きくなっています。
社員の数が多い企業では、パルスサーベイよりもセンサスを採用することが多く、年に1回または2回のアンケートでまとめて調査を行う例が多くありました。頻度が低いことで社員の負担を軽減したり、次回アンケートまで対策に時間をかけられたりするメリットがある一方で、分析に時間がかかったり、課題が膨大に現れて対策に手が回らなくなったりする課題もあります。
アンケートを取っただけになりやすく、設問数の多さから回答率が低くなることもあったため、比較的気軽に回答でき、大きな課題になる前に現状に気づける点で、パルスサーベイを採用する企業が増えています。
パルスサーベイの導入メリットと注意点
パルスサーベイの概要やセンサスとの違いを理解したところで、どのような導入メリットがあるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
メリットはもちろん、実施する上での注意点も把握する必要があります。ここでは、パルスサーベイの導入メリットと注意点を見ていきましょう。
導入メリット
パルスサーベイの導入メリットは、以下の通りです。
- 従業員満足度をリアルタイムに近い状態で把握できる
- 調査の結果を比較しやすい
- 回答をきっかけに内省・フィードバックする機会が生まれる
- 設問数が少なく、担当者の負担を軽減できる
パルスサーベイは週次または月次で実施するため、よりリアルタイムに近い現状を把握できます。従業員から不満の声があった場合にはすばやく対策をとることができ、不安を持った従業員にスピーディーにフォローできるのがメリットです。
調査の頻度が高いため、前回の調査との比較や推移の分析などもしやすくなります。前回に比べてエンゲージメントが下がった社員をフォローしたり、対策の成果をチェックしたりすることが可能です。
従業員にとっては、短いスパンで行われる調査によって、自分自身の思いや働きぶりなどを内省・フィードバックする機会になります。内省が習慣化されれば、日々の仕事を自身で見直せるようになり、従業員それぞれの成長を期待できるでしょう。
従業員調査を実施する担当者にもメリットがあります。設問数の多いセンサスは設計・実施や分析に多くの時間がかかりますが、パルスサーベイは設問数が少ないので実施しやすいです。ツールを活用すれば、さらに負担を軽減できるので、コア業務の時間を確保したり、分析に注力したりすることができます。
注意点
パルスサーベイはメリットが多いものの、いくつか注意点もあります。まず気を付けたいのが、質問項目が少ないため、細かい実態まではわかりにくいことです。設問数は必要最低限にするので、表面的な設問が多く、サーベイだけでは詳細はわからないこともあります。調査結果を元に、面談やミーティングを行うなど、フォローが必要になるでしょう。
次に注意したいのは、調査の都度、対策を検討・実施しなければいけないことです。アンケートと対策はセットであり、分析で現れた課題に対策し、結果を測定するところまでがパルスサーベイと言えます。パルスサーベイは実施頻度が高いので、回答から対策までの時間が短く、対策の検討・実施は担当者の負担になりやすいです。対策を実施してから次の調査までのスパンも短いので、すぐに効果が現れない場合もあります。
また、調査結果の取り扱いにも注意する必要があります。率直な回答をしてもらうことが成果につながるので、調査に不信感を持たれると、偽った回答が増えるかもしれません。個人が特定されないこと、調査結果を共有する方法・範囲、調査目的などを事前にしっかりと共有し、合意を得てから実施することがポイントです。
パルスサーベイの効果的な質問例
パルスサーベイの質問項目は、大きく分けて3つに分けることができます。
- 仕事へのやりがいや喜びに関する質問
- 経営理念・ビジョンに関する質問
- 業務に関する質問
全体で5~15問ほどで、0~10点での評価、「あてはまらない」「あてはまる」といった選択肢形式にするなどの方法があります。ここでは、それぞれの項目の意図と合わせて、効果的な質問例を見ていきましょう。
なお、項目や質問はあくまで例ですので、パルスサーベイの目的や自社の課題に合わせて実施することが大切です。
仕事へのやりがいや喜びに関する質問
従業員自身が仕事に対してやりがいを感じているか、楽しく働けているかなどを調べる項目です。仕事に対する意欲やモチベーションを把握することができ、スコアの低い社員にはフォローが必要になります。
この項目での、効果的な質問例は、以下の通りです。
- 仕事をしていく中で自分自身の成長を実感していますか?
- 日々の仕事で、自分の知識やスキルを発揮できていますか?
- 仕事中、時間が経つのが早く感じますか?
- 仕事の中で、やりがいを感じられる瞬間はありますか?
- 最近、仕事を通して嬉しいことはありましたか?
経営理念・ビジョンに関する質問
この項目では、従業員が企業に対してどのような意見を持っているかを把握できます。従業員満足度を把握する重要な項目なので、企業への印象や評価がわかる質問を用意しましょう。
効果的な質問例は、以下の通りです。
- 友人や知人、家族に自社を勧めたいですか?
- 自社で成長する機会がありましたか?または成長を実感していますか?
- 職場に信頼できる上司や同僚はいますか?
- 経営理念やビジョンを理解できていますか?
- 経営陣による健全な意思決定ができていると思いますか?
業務に関する質問
この項目では、業務に貢献している感覚や組織への帰属意識など、エンゲージメントに関わる回答を求める部分です。仕事をする上での自己肯定感や当事者意識などがわかる設問を心がけましょう。
効果的な質問例は、以下の通りです。
- 自分の意見やアイデアが受け入れられていると感じますか?
- 自分の仕事が自社に貢献していると感じますか?
- 自分への期待を感じる機会はありますか?
- 現在の仕事に対する不満はありますか?
- ワークライフバランスを実現できていますか?
パルスサーベイの活用事例
パルスサーベイは、企業・組織運営における様々なシーンで活用されています。4つの活用事例を参考に、自社で必要な部分に導入してみましょう。
- 従業員への簡易ストレスチェック
- 新規人材への実態調査
- 人事異動に伴うフォロー
- 人事評価や施策への意見調査
従業員への簡易ストレスチェック
従業員の健康について問う質問を含めることによって、簡易的なストレスチェックを行うことができます。心身の不調は時間が経過するほど悪化する場合もあるので、短いスパンで実施するパルスサーベイは早期発見に効果的です。
従業員個人だけではなく、組織が抱えるストレスを調査するのも良いでしょう。ストレス度合が高い場合には、企業やチームの課題を解決する必要があります。
新規人材への実態調査
新しく入社した人材は、慣れない職場や人間関係に疲労やストレスを感じる場合が多いです。徐々に慣れていくものの、ストレスが大きくなった場合には、離職や休職などにつながるリスクがあります。
パルスサーベイでは、新規人材の状態を把握するために便利です。ストレスを感じている項目を把握し、すばやくフォローすることで、離職の防止や早期戦力化につながります。
人事異動に伴うフォロー
新入社員だけではなく、人事異動が行われた際にも従業員は疲労やストレスを抱えやすいです。新しい業務や人間関係などに悩む期間が続くと、本来のパフォーマンスが発揮できず、離職や休職を考える場合もあるでしょう。
人事異動が行われた際は、新規人材へのフォローと同じく、環境に馴染めているかパルスサーベイを実施するのがおすすめです。早く順応できるように働きかけ、離職やモチベーション低下を防ぎましょう。
人事評価や施策への意見調査
新しい人事評価や施策を検討する際に、経営層だけで決定すると、現場の従業員から不満が出たり、問題点を指摘されたりするケースがあります。
幅広い意見を取り入れるために、パルスサーベイが便利です。企業が抱える課題や施策に期待することなどを把握することによって、従業員の意見が反映された制度を検討できます。
企業の実践事例
パルスサーベイを既に導入している日本の企業が多くあり、実践事例は自社での実施に役立つはずです。ここでは、3社の実践事例をご紹介します。
- ソフトバンク株式会社
- 株式会社サイバーエージェント
- アディダス株式会社
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社では、人事本部がパルスサーベイを開発し、2019年10月から実施を開始しました。質問項目は13あり、仕事や生活、健康など幅広い設問を設定しています。
従業員の満足度や生活・健康の様子を把握するだけではなく、結果をもとに上司とのコミュニケーションを活性化することも、パルスサーベイの目的にしているのが特徴です。
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントでは、2013年から月1回のパルスサーベイを実施しています。設問に対して、5段階の天気マークで回答するのが特徴です。
アンケートの結果を分析する部署「人材科学センター」を設置し、様々な観点で分析を行っています。分析結果を元に、キャリアエージェントチームや取締役が個人・チームのコンディション把握に役立てています。
アディダス株式会社
アディダス株式会社では、月1回のパルスサーベイをモバイル配信しています。従業員は回答を行うと集計結果を確認することが可能です。
フィードバックに力を入れており、管理職がパルスサーベイの結果をすぐに確認でき、個人やチームの課題に対して、対策・検討できる体制を整えています。
まとめ
パルスサーベイは、従業員に対して短いスパンで調査を行う手法です。設問が少ないため担当者に負担がかかりにくく、リアルタイムに近いデータを収集できます。
従業員満足度の把握以外にも、簡易的なストレスチェックや新規人材のフォロー、新しい施策の意見調査などにも便利です。多くの企業で実践されつつあるので、事例も参考にしつつ、自社でパルスサーベイを実施してみましょう。