ローカルベンチマークとは?目的や取り組み方、事例について解説 | Talknote Magazine

ローカルベンチマークとは?目的や取り組み方、事例について解説

企業が円滑な経営を行うためには、経営状況を正確に把握することが大切です。状況に合わせて、適切な対策を取ることによって、良い状態を維持できるようになります。経営状況を把握するために役立つのがローカルベンチマークです。

この記事では、ローカルベンチマークについて、概要や使い方、目的、メリット・デメリットまで詳しく解説します。上手に活用して、経営改善や課題解決に役立てましょう。

ローカルベンチマークとは?

ローカルベンチマークとは、平成27年6月30日に発表された「日本再興戦略 改訂2015」で策定を盛り込まれた、「中小企業団体、地域金融機関等による地域企業に対する経営支援等の参考となる評価指標・評価手法」と表現された概念のことです。

地域企業をサポートするための評価指標・評価手法として検討されたのが始まりですが、現在は多くの企業で活用できる「企業の健康診断ツール」として活用されています。通称「ロカベン」と呼ばれ、企業の現状把握、現状を踏まえた経営改善の推進に効果的です。

ここでは、ローカルベンチマークで基準となる財務指標やシートの使い方・記入例を見ていきましょう。

6つの財務指標

ローカルベンチマークを実践する際に用いられるのが、ローカルベンチマークシートです。シートを使って財務状況を分析する際に、以下に挙げる6つの財務指標の把握が必要になります。

  • 売上増加率(売上高/前年度売上高)-1)
  • 営業利益率(営業利益/売上高)
  • 労働生産性(営業利益/従業員数)
  • EBITDA有利子負債倍率((借入金-現預金)/(営業利益+減価償却費))
  • 営業運転資本回転期間((売上債権+棚卸資産-買入債務)/月商
  • 自己資本比率(純資産/総資産)

それぞれ以下のような企業の能力を分析するために使用されます。

  • 売上増加率:成長の可能性
  • 営業利益率:収益性
  • 労働生産性:成長力や競争力
  • EBITDA有利子負債倍率:有利子負債の返済能力
  • 営業運転資本回転期間:必要運転資金の増減
  • 自己資本比率:経営の安全性

6つの指標をチャート図にまとめることで、一目で充実している部分と問題を抱えている部分を把握できます。

使い方

ローカルベンチマークシートは、「6つの指標」(財務面)、「商流・業務フロー」、「4つの視点」(非財務面)という3枚で構成されています。

3つのシートで指定された場所に応じた内容を記入するのが基本の使い方です。「商流・業務フロー」シートでは業務別の実施内容・差別化ポイント、仕入れ先・協力先・得意先・エンドユーザーの取引内容・選定理由などを記載します。「4つの視点」(非財務面)では、経営理念や事業の強み、競合、内部管理体制などを記入しましょう。

一度記入するだけでも経営改善に役立つ情報を得られますが、何度も取り組むことで見えてくるヒントが変わることもあります。経営者だけで取り組む場合と、従業員や専門家と一緒に取り組む場合でも効果は変わるでしょう。複数回取り組んだり、取り組み方を変えたりしながら、ローカルベンチマークを活用するのがポイントです。

なお、ローカルベンチマークの使い方については、企業編と支援機関編という2種類のガイドブックがPDF形式で公開されています。初めて活用する方や理解を深めたい方はぜひ下記のリンクをチェックしてみてください。

≫ ローカルベンチマーク ガイドブック(企業編)(PDF形式:12,370KB)
≫ ローカルベンチマーク ガイドブック(支援機関編)(PDF形式:15,443KB)

ローカルベンチマークの目的

ローカルベンチマークは、地域企業の活性化や地域経済の維持などを目的に導入が推奨されています。ローカルベンチマークシートによって経営状況や課題を可視化することによって、経営者自身が課題に気づいたり、金融機関・支援機関とコミュニケーションを取りやすくなったりすることを目指す施策です。

個々の企業が課題を解決できるようになれば、地域企業の活躍が期待でき、地域経済にも良い影響を与えます。その効果は地域にとどまるものではなく、ローカルベンチマークを活用した企業が経営改善を行うことで、国や都市などより広い範囲に好循環をもたらすでしょう。

ローカルベンチマークのメリット

ローカルベンチマークを活用するメリットは、以下の6つです。

  • 経営に関わる数字を可視化できる
  • 非財務面から経営を見直すことができる
  • 自社の課題を見つけることができる
  • 事業計画を立てやすくなる
  • 制度利用に役立つ
  • シンプルで使いこなしやすい

経営に関わる数字を可視化できる

売上や収益は把握していても、持続性や健全性などに目が向けられていなかった企業もあるのではないでしょうか。ローカルベンチマークでは、収益性以外にも生産性や効率性、安全性なども分析するため、経営に関わる数字をしっかり可視化できます。

現在の売上が高くても、持続性の評価が低ければ、長く売上を維持するための取り組みが必要です。数値をヒントに、自社の経営課題を明らかにできます。

非財務面から経営を見直すことができる

経営では、資金や収益など財務面に注目しがちですが、お金に直接関わらない非財務面に問題を抱えていることもあります。

ローカルベンチマークシートでは、商流や業務フロー、経営者、事業、競合、内部管理体制なども分析が可能です。どれも問題があると財務に影響を与える可能性があるため、非財務面の課題解決にもローカルベンチマークが役立ちます。

自社の課題を見つけることができる

ローカルベンチマークシートに数値や事業内容などを書き込むことで、状況が可視化されます。頭で考えていたことや漠然と感じていたことが文字になり、課題を発見しやすくなるのがメリットです。

記入した部分だけではなく、空欄になった部分や記入するのに苦労した部分などにもヒントが隠れています。なぜ書けなかったのか、なぜ悩んだのかを考えて、課題を明らかにしましょう。

事業計画を立てやすくなる

ローカルベンチマークによって、財務面と非財務面の現状を把握できます。どちらも事業計画に欠かせない情報であり、事業計画の作成や再検討に役立てることが可能です。財務状況に合わせて事業計画を修正したり、業務フロー・商流を参考に事業計画を検討したりするなど、より良い計画を立てるために活用できます。

制度利用に役立つ

経営に関する各種制度を利用するためには、経営に関する情報が必要です。ローカルベンチマークでは財務に関するデータを記入するため、窓口への書類作成や支援機関によるヒアリングなどに対応しやすくなります。

シンプルで使いこなしやすい

ローカルベンチマークは、シートをダウンロードして記入するというシンプルな使い方で実施できます。数値の面では、ある程度の知識が求められますが、導入のハードルはそれほど高くありません。

ローカルベンチマークのデメリット

ローカルベンチマークには、メリットだけではなく、デメリットもあります。

  • 事例が少ない
  • 活用方法を自社で見つけなくてはいけない

ローカルベンチマークは経済産業省が推奨しているものの、まだ事例はそれほど多くありません。そもそもローカルベンチマークを知らないケースもあり、活用しようとしたときに手本が少ないのがデメリットです。探り探りで実施することになるので、上手く活用できているようで実は誤った使い方だったということもあるかもしれません。

ガイドは公開されていますが、基本的には自社で活用方法を見つける必要があります。専門家や支援機関の利用が難しい場合は、時間と手間がかかったものの、成果を得られないこともあるでしょう。

自社に合った方法を実践できるのはメリットでもありますが、正しく使えるか不安な場合はコストを捻出して外部にサポートを依頼する方が安心です。

ローカルベンチマークの取り組み方

ローカルベンチマークは、シートを記入するだけで終わって意味がありません。シートで可視化された課題に対して、適切な取り組みを行うことが大切です。取り組み方をおさえて、ローカルベンチマークを最大限に活用しましょう。

業務フローを見直す

自社の業務がどのような流れで行われているかを把握し、問題のある部分を改善しましょう。例えば、製造業の場合、提案・受注、試作、仕入れ、製造、検品・納品が一般的なフローです。ステップが多すぎると省略できる可能性があり、少なすぎると質の低下の原因かもしれません。

また、ローカルベンチマークシートでは、業務フローに対して差別化ポイントを記入します。差別化ポイントを絶えず検討することで、自社ならではの強みが見えてくるはず。業務でこだわっていること、工夫していることを生かしながら、業務フローを再設計していきましょう。

商流を再検討する

商流は、仕入先・協力先、得意先・エンドユーザーという2つの面から分析を行う項目です。取引先に対しては規模や内容、選定理由、顧客に対しては売上や内容、自社が選ばれている理由を記入します。

ここで大切なのは、なぜその取引先を選んでいるのか、なぜ自社が選ばれているのかです。理由が明確で、自社にもメリットがあれば良い関係を築けていると言えるでしょう。明確な理由がなければ、取引先との関係を再検討したり、自社のサービスを見直したりする必要があります。

様々な視点から現状を整理する

業務フローや商流、財務分析は、それぞれを把握することも大切ですが、単体では見えてこないこともあります。業務フローの把握だけでは見つからなかったものが、商流の視点から見ることで明らかになることもあるでしょう。

そのため、ひとつの視点にこだわりすぎずに、様々な視点から分析を行い、それぞれとの関係性にも注目することが重要です。

誰と取り組むかで共有や対話を工夫する

ローカルベンチマークはまず経営者一人で取り組むことができます。自分自身の考えを整理することで、経営や企業の全体像を把握できるのがメリットです。課題に取り組むためには従業員や社外の方との協力が必要なので、結果の共有を忘れず行いましょう。

多様な意見を求めたい場合は社内のメンバーや社外の方と一緒に取り組むのもおすすめです。他者の視点が加わることで、経営者自身では見えなかったものも現れやすくなります。協力して意見を出すことによって、分析後の取り組みを進めやすくなるのもメリットです。

ローカルベンチマークの活用事例

ローカルベンチマークは様々な企業や金融機関などで導入されています。まず紹介するのは高崎信用金庫の事例です。取引先の事業内容に対する理解を深めるためにローカルベンチマークを実施し、顧客の事業を把握することができたと言います。結果を踏まえて、人材育成研修や専門家・支援機関によるサポートなどの取り組みを行い、顧客との関係構築が強固になったり、地域の支援機関とつながりが生まれたりするなど、多くの効果がありました。

次に紹介するのは株式会社京葉銀行の事例です。知識習得が個人の感覚によるところが強かったこと、経営者とのコミュニケーションや事業内容の把握を上手く指導できていなかったことから、ローカルベンチマークを導入しました。ロカベンシートを事業性評価に活用したことで、顧客との対話が円滑に進められるようになり、融資件数増加などの結果にもつながっています。

まとめ

ローカルベンチマークを活用することによって、企業の経営状態や課題が明らかになります。可視化された情報を参考に改善に取り組んだり、専門家・支援機関と円滑にコミュニケーションを取ったりすることで、より良い経営を目指せるのがメリットです。メリットだけではなくデメリットもあるので、両方をしっかり理解して、ローカルベンチマークを経営に取り入れてみましょう。

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