ケースメソッドとは?問題解決・意思決定能力を高める教育手法を解説
この記事では、ケースメソッドの特徴やメリット、課題、取り組み方を詳しく解説します。ケーススタディとの違いにも触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
ケースメソッドとは?
ケースメソッドは、実際に合った経営課題の事例を討論する中で実践的な問題解決力を身につける研修方法です。座学ではなくディスカッションがメインになるため、解決までの道のりを疑似体験できます。また、具体例を用いているため、実際に課題が現れたときに経験を生かしやすいのが特徴です。
ケースメソッドは、世界有数のビジネススクールである、アメリカのハーバードビジネススクールで1920年代に誕生しました。日本には、感受性訓練法として1960年代に導入され、リーダー教育などに活用されています。
ケースメソッドとケーススタディの違い
ケースメソッドと同様に、具体例を活用した教育手法としてケーススタディがあります。企業で実際に起きた事例を取り上げることは共通していますが、学習方法は同じではありません。
ケースメソッドは、具体例に対して参加者で討論し、分析から解決までを疑似体験します。解決を目指すことを通して、実際に起きたときに生かせる力を身につけられるのが特徴です。
一方、ケーススタディは、具体例から学ぶことを目的にしています。課題が発生した理由や背景などを分析し、関連する理論や法則などを学ぶ手法です。ケースメソッドを主体的な実践演習とすれば、ケーススタディは能動的なインプット学習と言えます。
ここで注意したいのは、どちらが優れているというわけではないことです。例えば、あまり実際のケースに触れたことがない従業員が対象なら、まずケーススタディでインプットから始めた方が良いかもしれません。ある程度経験を積んでから、ケースメソッドで実践に取り組む方が効果的ではないでしょうか。対象者のレベルや目的などに合わせて、最適な方法を取り入れることが大切です。
ケースメソッドを取り入れるメリット
ケースメソッドでは、ケースを用いて実践的な教育を行えることから、様々なメリットを期待できます。ここでは、主なメリットを3つ解説します。
- 問題解決能力が向上する
- 実践力や分析力などが身に付く
- 事例や業界情報を学ぶことができる
問題解決能力が向上する
ケースメソッドでは、参加者自らが考え、具体例の解決を目指して取り組みます。自分ならどうするかを考えることによって、課題が発生したときに発揮できる問題解決能力の向上を期待できます。
個人の能力はもちろん、組織・チームとしての問題解決能力アップも期待できます。より良い解決法を見つけたり、スピーディーに解決に取り組んだりしやすくなるのがメリットです。
また、問題を解決するスキルはもちろん、課題に立ち向かう姿勢も養えます。問題に直面したときに怯むことなく、解決に向かって粘り強く取り組める人材・組織が生まれるでしょう。
実践力や分析力などが身に付く
具体例を用いて実践的な学習に取り組むことで、実践力の習得を期待できます。インプット型の学習では知識やスキルはあるものの、実践に移せないこともありますが、ケースメソッドであれば課題解決の疑似体験から実践力を身につけることが可能です。
解決策を考えるためには、具体例を分析したり、考えを組み立てたり、意志決定をしたりする必要があります。様々なケースを分析し、解決方法を決めることで、実践に活かせるスキルの習得を期待できます。
問題解決能力も含めて、これらの実務能力はリーダーに求められるスキルです。そのため、ケースメソッドを通して人材のリーダーシップも育成できます。
事例や業界情報を学ぶことができる
ケースメソッドでは、様々な事例を取り扱います。事例それぞれに特徴や背景があり、討論を通してケースや業界などについて理解を深められるのがメリットです。
様々な事例や業界を知ることは、幅広い対応力につながります。実際に起きる課題は、必ずしも学んだケースと同じではありません。多種多様なケースに触れていれば、ある課題が生まれたときにケースメソッドで得た経験を生かしやすくなります。
ケースメソッドの課題
ケースメソッドは、実践的な能力を学べる手法ですが、当然メリットばかりではありません。取り組み方次第ではあまり効果が出ない場合もあるため、実施する方はあらかじめ課題を理解しておく必要があります。気を付けたい3つの課題をチェックしていきましょう。
- 主催者の力量に左右される
- 討論の目的が曖昧だと効果がない
- 実際に活用できるとは限らない
主催者の力量に左右される
ケースメソッドでは、決められた答えがないため、主催者・司会の導き方が肝心です。上手く働きかけることができなければ、活発な意見交流ができなかったり、プロセスが順序良く進まなかったりするなど、ケースメソッドが成立しにくくなります。
完全に自主性に任せるのではなく、考えるポイントを与える、話しやすい雰囲気をつくるなど、活発な学習を実現する工夫が必要です。
討論の目的が曖昧だと効果がない
明確な答えがないことと合わせて、討論の目的も曖昧になりがちです。主催者が目的を明確にしないと、参加者は「あくまで例だから討論をしても意味がない」「答えがないなら考え甲斐がない」などと思われる可能性もあります。
なぜケースメソッドに取り組むかを明らかにするために、冒頭で目的を共有するのが重要です。「具体例から自由に発想して多様な解決方法を見つけよう」「課題が起きたときに生かせる能力を身につけよう」など、取り組み方を伝えましょう。
実際に活用できるとは限らない
ケースメソッドで様々な事例を学んだとしても、実際に活用できるとは限りません。学んだ内容に合った課題が現れないこともあれば、能力を正しく活用できない場合もあります。
ケースメソッドでは、参加者が取り組みやすいようにシンプルなケースを扱うことも多いです。実際に直面する課題は複雑なことも多く、学んだ内容だけでは太刀打ちできず、誤った判断をしてしまうリスクもあります。
ケースメソッドの取り組み方法
ケースメソッドの取り組み方は、以下の流れが基本です。
- ケースを選定する
- 実施する前に対象者に内容を共有しておく
- ケースを理解する
- 少人数のグループで討論する
- 全体で討論する
- ケースに対する解決策をまとめる
- フィードバックの機会をつくる
ステップごとのポイントを理解し、実践に生かしていきましょう。
ケースを選定する
まず、ケースメソッドの担当者がケースを選定するところから始めます。大学院やビジネススクールなどが事例を公開しており、利用することが可能です。
ケースメソッドに取り組んでいる企業は多いため、既に分析されている事例があります。調べると分析結果が出る場合もあるので、なるべくあまり利用されていない事例を活用するのがおすすめです。
オリジナリティのあるケースメソッドを行いたいなら、自作する方法もあります。身につけたい内容やトレンドなどを反映させる必要があるので、作成スキルを持った人材やリソースが必要です。
実施する前に対象者に内容を共有しておく
ケースメソッドを実施する前に、対象者に内容を共有しましょう。目的を知らせたり、事前準備をお願いしたりすることで、より効果的な実践になりやすいです。
あらかじめ事例を配布する方法もあります。参加者が事例について考えをまとめることができ、研修当時に活発な意見交流を期待できるでしょう。
ケースを理解する
ここからは、ケースメソッドの実践に移ります。参加者は、文章やスライドで示したケースを理解するところから始め、それぞれ背景や解決策などに思考を巡らせるステップです。自分の考え方をまとめ、ディスカッションに向けて参加者それぞれで準備します。
少人数のグループで討論する
次に、少人数のグループに分かれ、討論・ディスカッションを行います。すぐに討論を始めるのではなく、リーダーを決めて進行しやすくすることが大切です。
ディスカッションでは、メンバーが平等に発言し、意見交流を行います。意見の違いを知ったり、自分にはなかった考えに気づいたりする中で、考えをブラッシュアップするのがポイントです。
全体で討論する
グループごとにディスカッションを行った後に、グループの意見を全体で共有し、討論を行います。それぞれの意見に耳を傾け、さらに意見を磨き上げていきます。
リーダーが代表して発表するのが基本ですが、全体に向けて話すことでプレゼン力を育てることも可能です。
ケースに対する解決策をまとめる
最後に、討論をまとめて具体例の解決策を検証しましょう。グループの意見を比較・検討し、最終的な方法を決定しますが、良し悪しを決めることではありません。どの解決策も正解であり、分析から解決までを考えたプロセスが重要です。
主催者・司会が研修を締める、討論のサポートに徹するなど、スタイルに合わせてケースメソッドを締めくくりましょう。
フィードバックの機会をつくる
ケースメソッドを実施した後には、必ずフィードバックの機会をつくることが大切です。やりっぱなしになってしまうと、研修の成果がわからず、効果があまり出ない場合があります。
実施後にアンケートの記入をお願いしたり、研修での変化に注意してフォローしたりするなど、フィードバックやフォローに力を入れましょう。
まとめ
ケースメソッドは、具体的な事例を通して、実践的な課題解決能力や分析力、意志決定力などを育成できる手法です。
効果的な研修にするためには、主催者・司会が適宜フォローしたり、目的を明確にしたりすることを意識しましょう。手順・流れも参考にして、ケースメソッドをぜひ実践してみてください。