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ケイパビリティを高める組織戦略とは

ケイパビリティという言葉は「能力」という意味で使われることもありますが、ビジネスでは違う意味を持っています。組織に関する専門用語であり、競争が激しくなっている昨今において、企業が意識すべき重要な考え方です。

この記事では、ケイパビリティの概要や意義、向上させるための人材育成方法などを解説します。注目される背景や事例などにも触れるので、ぜひ参考にしてみてください。

ケイパビリティとは?

ケイパビリティとは、「できる」「能力が高い」などの意味を持つ「capable」の名詞です。「能力」「才能」「可能性」といった辞書的な意味があります。

ビジネスシーンで使われる場合は、「企業全体の組織力」「組織の遂行能力」といった意味で用いられる用語です。これは、1992年にジョージ・ストークス、フィリップ・エバンス、ローレンス E.シュルマンによる論文で発表されました。

では、ケイパビリティが現在注目されている背景やメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。戦略の立て方や事例、コアコンピタンスとの違いにも触れていきます。

ケイパビリティが注目される背景

ケイパビリティは組織力を示す言葉ですが、それが求められる背景にはビジネスを取り巻く環境の変化があります。新しいテクノロジーが次々に発表されたり、新たなビジネスモデルが生まれたりする中で、日々常識や需要が変わり続けています。

VUCAという言葉も注目されており、現代社会は変動性・不確実性・複雑性・曖昧性があり、簡単に解決策を見つけることは困難です。

そのような現状に個人の能力だけでは対応するのは難しいため、組織として変化に対応する力を身につけ、社会の変化や他社との競争の中で生き残らなければならないのです。

技術の発展や景気の動向、グローバル化などの外的要因によって揺らぐことのない組織力があれば、激動のビジネスシーンでも強みを打ち出して経営を実現できます。

ケイパビリティを取り入れるメリット・デメリット

ケイパビリティに注目した経営は現代に求められていますが、活用する上でいくつかのデメリットもあります。デメリットを理解した上で、デメリットを回避し、メリットを最大限に引き出す工夫が必要です。

メリット

ケイパビリティを取り入れるメリットは、主に2つあります。

  • 競合と差別化できる
  • 一度高まると持続性を期待できる

ケイパビリティを高めることによって、組織としての強みが強化されます。その過程で時間やコストをかけているため、他社が同じように組織を変えようとしても、真似することは簡単ではありません。競合との差別化に効果的であり、業界での地位を確立できるチャンスが生まれます。

また、組織力は一朝一夕で高まらない一方で、一度定着すれば持続性を期待できるのもメリットです。社会や市場のニーズと合っていることを前提に、持続的に組織力がプラスに働きます。

デメリット

ケイパビリティを取り入れる際に注意したいデメリットは、以下の通りです。

  • 速効性は期待できない
  • 外的要因に合わせた変化が求められる

ケイパビリティを取り入れる方針を立てたからといって、すぐに組織が変わるわけではありません。ビジョンを明確にしたり、それに合わせて人材を育成したりする必要があり、ケイパビリティが確立するまでには時間がかかります。

また、ケイパビリティを高める過程で、外的要因に合わせた柔軟な変化が求められます。外的要因が変わったときに、これまでの常識やケイパビリティに固執してしまうと、最悪経営破綻に至るケースも実際にありました。社会や時代の変化を受け入れ、形を変えていく柔軟性が必要です。

ケイパビリティ戦略の立て方

ケイパビリティを取り入れる戦略の中で、ケイパビリティを中心に据える戦略をケイパビリティ・ベース戦略と言います。

ケイパビリティ・ベース戦略では、4つの原則があります。

  • ビジネスプロセスの重視
  • 中心的なビジネスプロセスの変換
  • 部門間のつながりを強化
  • トップが先頭を走る

ケイパビリティを高めるためには、商品・サービス単体ではなく、それらを形にするプロセスや体制に注目し、改善や再構築を図ることが重要です。プロセスを変える際には、小さな変換だけではなく、中心的なプロセスやシステムを変換することが求められます。

複数の部門がある場合には、部門間のつながりを確保し、組織全体で取り組むことが大切です。一連の戦略はトップが責任を持って推進し、従業員を巻き込んで実践していきます。

ケイパビリティの実践事例

ケイパビリティの実践事例として象徴的なのは、アメリカ発のIT企業・アップル社です。アップル社といえばこれとわかるデザイン性や機能性は、私たちの生活に溶け込んでいます。

コンセプトを世に浸透させるために、アップル社ではあえて直営店を広げました。通常、店舗運営にかかるコストや店舗展開にかかる時間などがネックとなりますが、自社のスタッフが自社製品の良さを伝えることによって、アップル社のイメージを確立し、組織力を向上・維持しています。

コアコンピタンスとの違い

ケイパビリティと似ている概念として、コアコンピタンスがあります。コアコンピタンスは、組織において核となる能力や技術などを表す概念です。

そのため、ケイパビリティは組織全体の総合的な能力、コアコンピタンスは組織の強みとなる技術力と表現される点に違いがあります。

例えば、ある革新的なサービスを提案した場合、プロセス全体をケイパビリティ、それを可能にした技術力をコアコンピタンスと言うのです。

どちらかがあればよいというわけではなく、どちらも組織に欠かせません。違いを理解して、両者を向上できれば、より強みを持った組織を実現できるでしょう。

ケイパビリティの意義

企業がケイパビリティを確立する意義は、優位性や経営資源を確保することです。確立するまでに時間はかかるものの、ビジネスプロセスやバリューチェーンは外部に見えにくいため、他社が簡単に模倣することはできません。

そのため、一度構築されれば、他社との競争戦略で優位に立ちやすくなり、持続的な経営資源としてケイパビリティが土台になります。

変化の頻度が高く、劇的に変化も起きる中では、組織の軸が必要です。時代や社会の変化にも動じず、そして柔軟に変化できるケイパビリティが求められています。

企業がケイパビリティを把握するには?

ケイパビリティは目に見えないものであるため、やみくもに向上しようとするのではなく、しっかり把握・分析するところから始めることが大切です。

企業がケイパビリティを把握するためには、主に2つの方法が用いられます。

  • 自社の活動とその強みを洗い出す
  • SWOT分析を行う

自社の活動とその強みを洗い出す

ケイパビリティを把握するためには、自社の活動をバリューチェーンごとに書き出しましょう。

主なビジネスプロセスにおいては、仕入れ、製造、マーケティング、販売が一般的なバリューチェーンです。人材や組織に関するバリューチェーンには、福利厚生、総務、経理、技術開発、情報保護などが挙げられます。

これらを詳細にリストアップし、自社ならではの強みを洗いだしましょう。他社よりも優れている点は生かし、劣っている部分は強化する必要があるので、ケイパビリティを向上する戦略立案に役立てることが大切です。

SWOT分析を行う

フレームワークの一つである「SWOT分析」も、ケイパビリティを把握するために有効な手法です。4つの要素を内部環境・外部環境、プラス要因・マイナス要因に分けて、以下のような構造で分析を行います。

内部環境 外部環境
プラス要因 Strength(強み) Opportunity(機会)
マイナス要因 Weakness(弱み) Threat(脅威)

自社の強み・弱みを把握した上、外部要因として市場の商機、競合他社の登場などを照らし合わせて、相対的に評価するのがポイントです。自社での分析でわかったケイパビリティと相対的な認識が異なっていれば、分析の余地があります。顧客や社会などに評価されるケイパビリティを発見できるでしょう。

ケイパビリティを向上させる人材育成・教育方法

ケイパビリティを向上させるためには、人材育成・教育が必要です。とはいえ、どのような方法で育成すべきかわからない場合もあるでしょう。

そこで、3つの方法を解説しますので、ぜひ自社の人材育成に取り入れてみてください。

  • 教養教育に力を入れる
  • 従業員の視野を広げる
  • 360度評価で客観的なフィードバックを行う

教養教育に力を入れる

組織を支える人材を育てる上で、幅広い知識・教養を深めることは重要です。様々な事柄や最新の情報を理解していたり、それらへのアンテナが敏感になったりすることによって、変化の激しいビジネス環境に対応できる力が備わります。

従業員に対するセミナーや勉強会を実施したり、自主的な学習を支援したりするなど、積極的な働きかけが重要です。

従業員の視野を広げる

幅広い知識を身につけるだけではなく、視野を広げられる経験も必要です。社内で重要なプロジェクトに若手を参加させたり、グループ企業で他の業務を経験したりすることによって、所属している部署や基本的な業務から離れた部分も体験できます。

視野が広がり、価値観やスキルが多様化することは、変化の多い現代では組織にとって大きな力になるでしょう。自ら視野を広げようとする人材のために、支援制度を充実させることも重要です。

360度評価で客観的なフィードバックを行う

360度評価は、上司だけではなく、同僚や部下、自己評価を含めた評価制度です。さまざまな視点からの評価を受けられるため、上司だけではわからなかった強み・弱みに気づくことができます。客観的なフィードバックを行うことによって、より効果的な人材育成につながります。

激変する時代にケイパビリティをアップデート

激変する時代には、一度構築したケイパビリティのアップデートを続けることが大切です。時代に合わないケイパビリティではメリットは得られず、社会や競合から置き去りされるリスクがあります。

外的要因に応じてケイパビリティを大きく変化させる戦略を、ダイナミック・ケイパビリティ戦略と言います。顧客やパートナー企業、公的機関など外部に注意を向け、状況に合わせて柔軟にケイパビリティを再構築する戦略です。

ケイパビリティ・ベース戦略で土台を作り、必要に応じてダイナミックにアップデートを行い、時代に合った組織を作る必要があります。

ケイパビリティを正しく理解し、戦略の立案や人材育成・教育に取り組みましょう。

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