レジリエンスとは?ビジネスにおける必要性や高め方について紹介 | Talknote Magazine

レジリエンスとは?ビジネスにおける必要性や高め方について紹介

レジリエンスとは、逆境を乗り越える力を意味する言葉であり、個人がレジリエンスを身につければ、その人だけではなく企業にもプラスの方向に働きます。しかし、「レジリエンスを身につけるには、どのようなことが必要かがわからない」という方も多いでしょう。

本記事では、「レジリエンスの意味について詳しく知りたい」「レジリエンスを高める方法を知りたい」と思っている方に向け、以下の事柄を解説します。

  • レジリエンスの概要
  • レジリエンスが注目される理由
  • レジリエンスを高める方法

本記事を読めば、レジリエンスの獲得に必要なことや苦境に負けない組織を作るためのヒントが得られます。レジリエンスを高める方法について知りたい方は、ぜひ、本記事を参考にしてください。

レジリエンスとは?

レジリエンス(resilience)とは、英語で「復元力」「回復力」「弾力」といった意味を持つ言葉です。心理学用語では、困難や脅威にしなやかに適応する能力を指します。

脆弱性(vulnerability)と対になる概念で、ストレス(stress)と深い関係がある言葉です。ストレスを感じると多くの人は、意欲を失いますが、レジリエンスの高い人はストレスによる影響が少なく、むしろ力に変えられることが多いです。

近年注目されている概念ですが、初めて着目されたのは第二次世界大戦が起きた頃と言われています。迫害や殺戮を意味するホロコーストが行われ、孤児になってしまった子どもたちを調査したところ、トラウマから抜け出せない子どもと克服した子どもがいることがわかりました。その要因として、ストレスやプレッシャーを跳ね返す力、困難な状況でも順応する力が注目され、これらはレジリエンスの本質であると考えられています。

では、なぜレジリエンスは現代で注目されているのでしょうか。
理由・背景に加えて、メンタルヘルスとの違いも押さえていきましょう。

メンタルヘルスとの違い

精神面の状態を表す言葉に「メンタルヘルス」がありますが、レジリエンスとはどのような違いがあるのでしょうか。

メンタルヘルスとは、心の健康、精神的健康、精神衛生などと表現される言葉です。精神面に影響を与えるストレスや疲労、悩みなどに対処し、心を健康に保つために、個人個人はもちろん、企業単位でも対策が行われています。

レジリエンスも心の健康に関わる概念ですが、その中でも逆境に負けない力、困難な状況に適応する力などにフォーカスした能力です。

また、ストレス耐性という言葉も、レジリエンスと同じ場面で語られることが多くあります。レジリエンスの一種であり、ストレスに耐えられる能力を指し、この能力が高いほどストレスに耐えることができます。

「ハーディネス」「頑健性」という言葉との違いも覚えておきましょう。2つの言葉は、ストレスを跳ね返すために持っている特性のことです。精神的に強く、ストレスにも立ち向かっていく気質を指します。レジリエンスは跳ね返すだけではなく、順応する力も含まれます。よって、ハーディネスの高い人よりも柔軟性が高く、さまざまなシーンを乗り越えることが可能です。

レジリエンスが注目されている理由

レジリエンスが注目されている理由・背景はいくつかあり、それぞれが絡み合った現在の難しい状況が大きく関わっています。

終身雇用制度や年功序列制度などの慣習が崩壊しつつあるなど、日本の経済・産業構造は変化しており、変化に順応する過程でメンタルの不調を感じる労働者が増えたそうです。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったVUCA(ブーカ)時代と呼ばれる現代において、予想できない変化が起こりやすく、それらも働く人のストレスになるでしょう。

また、新型コロナウイルス感染症の流行により、リモートワーク中心で寂しさや社会とのつながりの希薄さなどを感じやすくなったことも、メンタルヘルスの問題につながっています。不調を感じた労働者への対応はもちろん、変化に伴うストレスに負けないために、レジリエンスが注目されました。レジリエンスを高めることでストレスや変化に順応する力を培い、メンタルヘルスの不調を予防し、労働者を守りながら、企業の持続可能な成長を目指す動きが出てきています。

レジリエンスを高める6つのコンピテンシー

レジリエンスを高めるためには、レジリエンス向上のために必要な総合的な能力を意味する、「レジリエンスコンピテンシー」が重要です。具体的には、以下の要素が該当します。

  • 物の考え方
  • 考え方の特徴
  • 喜怒哀楽といった感情
  • 行動に対する認識や理解
  • 感じ方や振る舞い方

これらレジリエンスコンピテンシーを細かい要素に分解すると、6つの特徴・行動特性に分けることができます。

  1. 自己認識
  2. セルフコントロール
  3. 現実的楽観性
  4. 精神的柔軟性
  5. 徳性の強み
  6. 人とのつながり

レジリエンスコンピテンシーを構成する上記6つの特徴について、それぞれ詳しく理解していきましょう。

1.自己認識

自己認識とは、自分の考え方や行動などを客観視する力です。自分自身を理解することは、困難に立ち向かうために必要な思考や行動に気づきやすくなり、ストレスやプレッシャーに対応できるようになります。

2.セルフコントロール

人間は、ストレスを感じた時に、イライラしたり、落ち込んだりするなど、さまざまな感情が生まれます。感情に任せてしまうと、正しい行動をとることはできません。自らの感情を制御し、適切な行動を選択できる人はセルフコントロールに優れています。

3.現実的楽観性

ストレスは誰でも感じるものですが、レジリエンスやストレス耐性が高い人は上手くつき合っています。現実的楽観性とは、ポジティブに捉えるスキルです。対処が難しいストレスをどうにかしようとするのではなく、ポジティブに変換し、適切な行動を探っていきます。

4.精神的柔軟性

精神的柔軟性がある人は、感情に任せるのではなく、柔軟に考えて状況を判断します。ストレスを感じても、自身の感情や環境などに流されず、臨機応変に対応できるのが特徴です。

5.徳性の強み

レジリエンスには、キャラクターや性格といった特性も関係あります。精神的に強い性格ということではなく、自分の特性を最大限に生かしていることが大切です。強みを理解した上で、自分に合ったアプローチでストレスに対抗していきます。

6.人とのつながり

ストレスに対応するためには、個人の能力だけではなく、周りの人とのつながりも重要です。周囲との関係を構築・維持することで、いざストレスを感じた時に、サポートを受けられるようになります。

レジリエンスの向上に関わる危険因子と保護因子とは

レジリエンスの向上に関しては、ストレスの原因となる危険因子やそれからの回復に関係する保護因子についても知っておく必要があります。

危険因子と保護因子は、それぞれ以下のような因子のことです。

  • 危険因子:困難な状況やリスクに対するストレスの要因となる因子
  • 保護因子:困難な状況やリスクを突破するために必要な因子

以下、それぞれの因子について詳しく確認していきましょう。

危険因子について

危険因子とは、困難な状況を感じさせたり、その状況に対するストレスにつながったりする因子のことです。人間関係の問題や病気、家庭環境、災害など、身体や心に負荷がかかる状況などが具体的な例として挙げられます。

レジリエンスは上記の要因を克服したり適応したりすることに大きく関係する概念です。

保護因子について

保護因子とは、困難な状況から立ち直るための因子のことを言います。具体的には、個人の考え方や相談できる人の存在などの要因を指す言葉です。

これらはレジリエンスを機能させるために重要な要素であり、保護因子を多く持っているほど、ネガティブな状況を脱却するために必要な要素が多いことを意味します。保護因子の数と質を高めることは、レジリエンスの向上につながります。

レジリエンスの高い人の特徴

レジリエンスが高い人の主な共通点は、以下の通りです。

  • 楽観的
  • あきらめない
  • 自尊感情を持っている
  • 感情を乱されない
  • 柔軟に考えられる
  • 周りと協力できる

特徴を理解することは自分の足りないところを認識したり、実践できている周りの人を見つけたりすることに役立ちます。

楽観的

失敗をしたり、困難な場面に直面すると、多くの人はストレスや不安を感じます。それは、「上手くいくだろうか」「失敗したらどうしよう」など、ネガティブな感情が芽生えるからです。

楽観的な人は、ネガティブに考えることが少なく、「きっと成功するだろう」「失敗を次に生かそう」など前向きに捉えることができます。一喜一憂することがあまりないため、ストレスや不安に対処することが可能です。

あきらめない

目標達成に向けて、困難にぶつかった時に、レジリエンスの高い人はあきらめずに取り組むことができます。

「この問題は乗り越えられない」「ここまでかもしれない」と考えるのではなく、「1つ1つ乗り越えれば大丈夫」「これをクリアすれば成長できる」など、ポジティブに変換できるからです。常に前を向いているため、難しい課題にチャレンジし、あきらめずに努力できます。

自尊感情を持っている

困難な状況に対して、「自分には無理だ」「自分が不甲斐ない」など、自分を認められないと不安に押しつぶされてしまうでしょう。

レジリエンスの高い人は、自尊感情を持っていることが多く、自分自身を受け入れ、強みをしっかり評価しています。「自分がダメだから」とモチベーションを下げることなく、等身大の自分で難問に立ち向かう力を備えています。

感情を乱されない

ストレスや不安のかかる状況でも、レジリエンスの高い人は感情を乱されません。失敗したことを引きずったり、立ち直るのに時間がかかったりすることが少なく、感情よりもまず状況の把握や対策を考えることに頭を働かせることができます。

感情のまま行動したり、言葉を口にしたりすると、自分の感情に振り回されることでもストレスを感じるでしょう。レジリエンスが高ければ、無用なストレスを感じることがなくなり、何事にも平常心で取り組めるはずです。

柔軟に考えられる

多くの人にとって厳しい状況であっても、見方や考え方を変えるとポジティブに捉えられることがあります。レジリエンスが高い人は、ネガティブなシーンでも前向きな材料を見つけ、発想や行動を転換できるのが特徴です。

周りと協力できる

ストレスや不安は一人で解決できることもあれば、解決できないまま抱えてしまうこともあります。困難なプロジェクトも一人の能力が高くても、成し遂げられないことが多いです。

レジリエンスが高い人は、自分自身で何とかしようとせず、周りと協力できます。抱えているものを周りの人に話したり、助けを求めたりすることで、ストレスや不安を和らげつつ、目標達成や課題解決を目指せるのが強みです。

ビジネスにおいてレジリエンスを高める3つのメリット

ビジネスシーンにおいて、レジリエンスを高める効果は以下の通りです。

  • 社員の負担を軽減できる
  • 苦境にも負けない企業・組織を作れる
  • 人間関係の風通しが良くなる

自社の課題と照らし合わせながら、効果を正しく理解していきましょう。

1.社員の負担を軽減できる

社員それぞれのレジリエンスを高めることで、さまざまな負担を軽減できます。ビジネスにおいて、クライアントや顧客との関わり、自社の経営方針の転換など変化が起きますが、状況に対応できる能力を身につけていれば、その影響は少なくなるでしょう。

2.苦境にも負けない企業・組織を作れる

個人に降りかかる困難だけではなく、企業やチームが苦境に立たされることもあります。ライバル企業の勢いが増したり、災害が起きたりするなど、予期せぬ事態が起きた時に、レジリエンスは乗り越える力になるはずです。非常時でも柔軟に対応でき、将来にわたって企業・組織を存続できる可能性が高まります。

3.人間関係の風通しが良くなる

レジリエンスが高まることによって、一人ひとりが周りと協力する風土が生まれます。協力しながら取り組む環境が整うことで、人間関係は改善されるでしょう。小さなトラブルから防ぐことができ、働きやすい職場の実現を期待できます。

レジリエンスの高め方

レジリエンスを高めるには、主に以下の3つの方法が挙げられます。

  1. ABCDE理論を活用する
  2. 自己効力感を向上させる
  3. 自尊感情を養う

レジリエンスを高めるための上記に挙げた方法は、個人で取り組んだりチームや企業で取り組んだり人材育成の場に導入したりなど、さまざまなアプローチで習得が可能です。

まずは個人から実践できるものを導入し、その結果を確認した上で、企業全体にレジエンスを高めるための方法を広めてみてはいかがでしょうか。以下、レジリエンスを高めるための具体的な方法について解説します。

1.ABCDE理論を活用する

ABCDE理論は、1955年にアルバート・エリスが提唱した概念です。眼前に発生した出来事をきっかけにして思考・解釈を巡らせ、感情や行動・生理的反応が引き起こされるというモデルです。

実際、目の前の状況はそれに直面した当事者の考え方次第で、肯定的に捉えることが可能です。例えば、「上司に叱られた」という出来事についても「問題に気づいて改善する機会を得た」と考えれば、平然としたままでいられます。

その後、自分自身の頑張りを尊びつつ失敗した原因を振り返って検証し、改善していければさらなる発展につながります。それを組織全体で行えれば、強い組織の形成につながるでしょう。

このようにABCDE理論を活かせば、ストレスをあまり感じずに日々を過ごしていけるだけでなく、逆境に強い組織を形成するための力になるのです。

2.自己効力感を向上させる

自己効力感とは、「自分ならできる」という認識を持ち、困難に立ち向かうことができる能力です。難しい状況でも心が折れることなく、取り組み続けることができます。自己効力感を高めるためには、小さな成功体験を積むこと、お手本となる人を参考にすることなどが大切です。

3.自尊感情を養う

自分自身を認める自尊感情は、レジリエンスに欠かせないものです。個人それぞれが自分を理解する努力をすることはもちろん、周りの人と認め合う環境が求められます。他者から認められることで自分に自信を持つことができ、レジリエンスの向上につながっていくのではないでしょうか。

企業のレジリエンスを高める方法

企業においてレジリエンスを高めるための方法は、主に以下の5つが挙げられます。

  1. 組織の心理的安全性を高める
  2. 社員のレジリエンスを高める
  3. ビジョンやミッションを浸透させる
  4. セミナーやプログラムを実施する
  5. 振り返りや検証で失敗を生かす

上記の5つの要素を活用することで、従業員のレジリエンスを高めていきましょう。

1.組織の心理的安全性を高める

まず、組織の心理的安全性を高めましょう。組織の心理的安全性とは、新しい分野への挑戦を奨励したり失敗に寛容な気持ちのある組織のことを言います。

具体的には、チームリーダーや上司などが部下に対して抑圧的な態度を取らないことや、従業員それぞれの価値観を認めるといったことが重要です。

  • チャレンジに対して積極的な姿勢を評価して応援する
  • 従業員の失敗を認めて課題のを乗り越えるためにサポートする

上記のような習慣が組織に根付くようにすれば、企業全体のレジリエンスを高め、困難に対して強く、研究を進めてイノベーションを生み出す企業になれるでしょう。

2.社員のレジリエンスを高める

次に、従業員それぞれのレジリエンスを高めることも必要です。先述した方法などを人事担当が積極的に用いて社員のレジリエンスを高めることで、組織全体のレジリエンスが高められます。

社員のレジリエンスを高めるには、組織としてレジリエンスの重要性を理解し、社員ごとにレジリエンスへの理解や浸透を促す施策が必要です。

例えば、レジリエンスについての研修や定期的なトレーニングなどを実践し、従業員がレジリエンスを高める環境を構築していきましょう。

3.ビジョンやミッションを浸透させる

自社のミッションやビジョンを従業員の間に浸透させ、明確にする取り組みもレジリエンスの強化には必要なことです。

外部へビジョンやミッションを発信するだけではなく、社内においても伝え続けることで、企業と従業員の目指す方向性を一致させられます。結果、現場の業務もスムーズに進みます。これにより、社会環境や市場の変化に対して乗り越えられる土台ができるでしょう。

4.セミナーやプログラムを実施する

レジリエンスが大切とはわかっていても、自己流でマインドを変えたり、マニュアル通りに上司が教育を行ったりして、簡単に身につくものではありません。

正しい方法でレジリエンスの育成を図るなら、セミナーやプログラムに参加するのがおすすめです。企業であれば、講師を招いて自社セミナーを開催するのも良いでしょう。

5.振り返りや検証で失敗を生かす

レジリエンスは一朝一夕では身につくものではないため、失敗を生かして成長することが大切です。失敗した時に責めてしまうと、次の機会に強いストレスや不安を感じてしまいます。

失敗の中にも学びはあり、頑張った部分もあるはずです。自分自身で頑張りを認めつつ、なぜ失敗したかを振り返りましょう。上司や同僚と失敗を検証する、次の目標を立てるなど、組織でフィードバックと改善を繰り返すことが、レジリエンスの強化につながっていきます。

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従業員のレジリエンス意識を強化して、時代や社会状況の変化に強い組織を形成するための一助となります。

また、従業員のタスク管理では期限を超過した後のタスクの通知がされるので、業務の抜け漏れを未然に防ぐために役立てられるでしょう。

まとめ

時代や社会状況の変化に対応し、先行きが不透明な中でもそれを乗り越えていくためには、企業のレジリエンスを強化することがより重要です。

レジリエンスが高いことで従業員のストレス耐性が上がり、それが社内全体に及ぶことで苦境でも柔軟に対応できる組織づくりが可能になるでしょう。個人や組織でレジリエンスの向上に取り組み、困難に負けない人材や企業の育成を進めてみてはいかがでしょうか。

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