リフレーミングとは?チームをプラスに導く方法を紹介
視点を変える手法をリフレーミングと言い、日常や生活で役立つテクニックです。この記事では、リフレーミングの種類やメリット、実践方法、ビジネスでの活用例をご紹介します。
リフレーミングとは?
リフレーミングとは、NLPと略されるコミュニケーション心理学のひとつである「神経言語学的プログラミング」の方法のひとつです。物事を見る枠組みを変えることによって、ポジティブに解釈することを指します。
例えば、コップに水が半分入っていたとき、「半分しか入っていない」「半分も入っている」と考えるのでは、捉え方は変わってくるでしょう。「半分しか」と思っていたフレームを「半分も」というフレームに変換すれば、ポジティブな気持ちになることができます。
リフレーミングは生活や仕事など、あらゆる場面で活用できるテクニックです。「手術による死亡率は10%です」「手術による生存率は90%です」はどちらも同じ意味ですが、「生存率」という言葉を使った方が希望を感じやすくなります。悩みや問題などを抱えたマイナスな状態では、言葉を言い換えたり、視点を変えたりするなど、既存のフレームを変えることで、気づきややる気につながりやすくなるのが、リフレーミングの特徴です。
ポジティブに変換するという点では、ポジティブシンキングと同じと感じる方もいるのではないでしょうか。ポジティブシンキングは、視点の転換などを問わず、純粋に前向きに考えるようにすることです。リフレーミングは、見方を変えた結果、ポジティブな考え方や行動が生まれるという点で、ポジティブシンキングとは異なります。
2種類のリフレーミング
リフレーミングには、大きく分けて2種類の方法があります。
- 状況のリフレーミング
- 内容のリフレーミング
どのようなシーンで用いられるのかなど、両者の違いとポイントを詳しく見ていきましょう。
状況のリフレーミング
状況のリフレーミングとは、今置かれている状況や背景に目を向けるリフレーミングです。物事や人の行動は、ある状況ではマイナスでも、見方を変えれば役に立つことがあります。
「神経質な性格で注意が細かい人だが、正確さが必要な経理業務に向いている」
「周りに相談するのが苦手な人だが、一人でやるべき仕事の出来はピカイチだ」
「失敗してしまったが、長い目で見れば良い経験になった」
上記のように、一見ネガティブに見える状況でも、「どのように役立つか」を考えることで、その人の良さ、トラブル・失敗の意味に気づくことができます。
内容のリフレーミング
内容のリフレーミングは、機会や経験などの意味を多角的に考えるリフレーミングです。例えば、上司から思うような評価をもらえなかったときに、落ち込んだり、上司に不満を感じたりするだけでは、前に進むことはできません。
評価が低かったことに対して、その理由を考えたり、不足している部分の改善に取り組んだり、期待してくれているからこそとやる気を高めたりすることが、内容のリフレーミングです。
意味のリフレーミングと言われることもあり、ある物事や機会の意味を捉えなおすことで、前向きな思考や行動につなげることができます。
リフレーミングのメリット
リフレーミングを仕事に取り入れると、以下のようなメリットを期待できます。
- モチベーションが高まる
- 自信が芽生える
- 苦手が少なくなる
- 人間関係を改善できる
メリットを理解して、リフレーミングの実践を検討してみましょう。
モチベーションが高まる
仕事で失敗をしてしまったとき、「迷惑をかけてしまった」「評価が下がってしまう」など、マイナスな感情になるでしょう。失敗を糧にするためには、十分に反省した上で前を向いて取り組むことが大切です。
リフレーミングによって、失敗や困難な状況を成長する機会と捉えることができれば、モチベーションが高まります。失敗してしまったときだけではなく、苦手な仕事や役割などにぶつかったときに、その意味を捉え直すことで、乗り越えるためのやる気が出てくるはずです。
自信が芽生える
誰しもコンプレックスはあり、自分に自信を持てない人も多いのではないでしょうか。リフレーミングは、コンプレックスを長所に変えることができる方法です。
例えば、話すのが苦手で営業の自信がなかったとしても、相手の話をしっかり聞ける聞き上手かもしれません。ヒアリングが得意と感じ方を変えれば、相手の課題を聞き取り、自信を持って提案できるようになるのではないでしょうか。
自分自身の嫌なところや弱点を振り返って、一度良い捉え方をしてみましょう。正当化してはいけませんが、強みになる部分には自信を持っていいはずです。
苦手が少なくなる
コンプレックスと同じように、人それぞれ苦手なことがあります。上手くできないことややりたくないことからは逃げてしまいがちですが、リフレーミングを駆使すれば苦手が少なくなる効果を期待できます。
「苦手を克服するチャンスだ」「誰でも苦手を乗り越えて成長したはず」など、苦手への感じ方を変えることで、チャレンジする勇気が芽生えやすくなります。
人間関係を改善できる
批判的な発言やネガティブな発言をそのまま受け止めていると、その人への苦手意識が生まれ、人間関係にひずみができる場合があります。
リフレーミングによって、マイナスな言葉を「課題解決のヒントかもしれない」「そういう考え方もある」と捉えれば、攻撃的に受け止めることが少なくなるでしょう。柔らかく言葉や行動を捉えられるようになり、人間関係を改善しやすくなります。
リフレーミングの実践方法
リフレーミングを実践する主な方法は、以下の6つです。
- 言葉の定義を見直す
- 「もし」を考える
- 時間軸をリフレーミングする
- 解体
- Want
- メタファー
それぞれどのようにリフレーミングをするのか、しっかり理解していきましょう。
言葉の定義を見直す
言葉の定義や意味は、自分自身のイメージを知らず知らずに固めてしまうことがあります。例えば、「自主性がない」と言われたら、「自分は行動力がない」などネガティブに捉えてしまいやすいです。
ただ、「自主性がない」を言い換えれば、サポートに向いている、任された仕事をしっかりこなせるなど、ポジティブに捉えることができます。
ここで注意したいのは、ポジティブな変換を逃げ道にしないことです。言い換えたことをしっかり実践できているかを考えましょう。もしできていないなら、長所になるように取り組むことが大切です。
「もし」を考える
「もし、〇〇だったら」という表現は、リフレーミングに役立ちます。「もし、あのときこうしていたら」と考えれば、次に似た機会が訪れたときに同じ失敗を繰り返さないはずです。
「もし、1週間後に良い返事がもらえたら」と想像すればやる気が湧き、「もし、お客さまから見たなら」と立場を変えれば改善点が見つかるでしょう。
時間軸をリフレーミングする
過去、現在、未来という時間軸の見方を変えるのも、リフレーミングのひとつです。ミスをしてしまったときに、「今の段階でのミスで良かった」と気持ちを切り替えて、今後に向けて立ち直ることができます。
新しい商品をつくりたいとき、「5年後に発売したとして、新しいと思ってもらえるだろうか」など、未来に目を向けることで、新しさにこだわったものが生まれるでしょう。
解体
リフレーミングをしようとしても、状況を上手く整理できないこともあるのではないしょうか。そのような場合、状況を細かく分けて考える「解体」が便利です。
例えば、プロジェクトが上手く進まず、チームの士気が下がっているとき、ただ「頑張ろう」と言っても状況は改善しません。そこで、「いつまでにやるべきか」「どのくらい時間がかかるか」「どの仕事が残っているか」など、細かく状況を分解します。
そうすることで、「まだ時間に余裕があるからじっくりやろう」とメンバーを落ち着かせたり、残った仕事を適切に振り分けたりでき、状況を改善するきっかけになるはずです。
Want
Wantとは、「どうしたい?」と自分自身に問いかける方法です。例えば、今の仕事を続けるべきか悩んでいるときに、「どうしたい?」と質問を投げかけると、自分の気持ちに目を向けられるでしょう。
「もう少し頑張りたい」「環境を変えたい」など、思い浮かんだ選択肢を実現するために何をしたらいいかをさらに問いかけると、何をすべきか見えてくるのではないでしょうか。
メタファー
メタファーは、間接的な比喩のことで、暗喩(あんゆ)と言われることもあります。インパクトのある言葉に言い換えることによって、言われた人が嬉しい気持ちになったり、共感を得たりしやすくなるのがメリットです。
ただし、相手が知らない言葉やたとえ話は理解しにくく、メタファーの意味がなくなってしまいます。多用しすぎも効果が薄くなるので注意が必要です。誰でもわかる例えを効果的に使いましょう。
ビジネスにおけるリフレーミングの活用例
ビジネスにおいて、リフレーミングはとても役立つ手法です。さまざまなシーンで活躍しますが、ここでは5つの活用例をご紹介します。
- 失敗してしまったとき
- キャリアを考えるとき
- 商品を開発するとき
- クレームを受けたとき
- 部下を指導するとき
実際のシーンを想像しながら、リフレーミングの実践に役立てていきましょう。
失敗してしまったとき
仕事で失敗してしまったとき、挫折してしまったときは、ショックを受けてしまいます。ただ、いつまでも落ち込んでいたり、他の仕事に影響があったりしてはいけません。
世界の名だたる成功者も上司も全員、失敗はしています。「失敗は成長の機会」「チャレンジしたからこその失敗だ」「次に生かせば良い経験になる」など、プラスにリフレーミングすることが成長に不可欠です。
キャリアを考えるとき
今後のキャリアを考えるときに、リフレーミングが役立ちます。まずは「どうしたい?」と自分自身に問いかけ、「出世したい」「出世したくない」など方向性を決めましょう。
出世したいなら、今の環境がキャリアアップに適しているのか、環境を変えるべきなのかなど、状況をリフレーミングしながら考えます。
出世したい思いからプレッシャーやストレスを感じているなら、出世しないメリットに目を向けるのも方法の一つです。「責任を負う機会が少なくなる」「プライベートも充実させやすい」など、メリットを強く感じれば、出世や成功以外の選択肢も見えてくるのではないでしょうか。
商品を開発するとき
商品を開発するときには、今までにない機能やアイデアが求められます。作る側の思いも大切ですが、顧客が求めているものとも違うこともあり、視点を変えることが重要です。
リフレーミングによって、「もしこうだったら」「顧客ならどんな機能が嬉しいか」などを多角的に考えることが斬新な商品につながっていきます。
代表的な例がポストイットとも呼ばれる付箋です。今では欠かせない文房具ですが、開発当初は粘着力が弱い点が難点でした。「すぐはがれて不便」ではなく、「貼ったりはがしたりできる」という長所に変換し、タスクやメモを伝える便利なアイテムになったのです。
クレームを受けたとき
クライアントや顧客からクレームを受けたときは、真摯に批判を受け止めることはもちろん、その本質に目を向けます。
「対応が二転三転すると、こちらも対応できない」と言われたら、社内での調整不足やスケジュールの設定ミスなどが原因だと考えられるでしょう。クレームに対して謝る、次の対応を考えるだけではなく、「どうすれば今後なくなるか」など、違う視点からクレームを生かす方法を模索することが大切です。
部下を指導するとき
部下を指導するときに、部下にとってショックを受けたり、落ち込んだりする指摘もしなくてはいけません。
リフレーミングを指導に取り入れれば、指摘をしながらポジティブな言葉をかけることができます。「チャレンジしたからこその失敗だから、次に生かそう」「注意されるのは伸びしろがあるからだよ」など、失敗や注意などの事実を認めながら、前向きになれる言葉を伝えましょう。
まとめ
リフレーミングによって、考え方や見方の枠組みを変えると、それまでは見えなかった気づきが生まれます。言葉の定義を見直したり、時間軸を変えて考えてみたりすることで、モチベーションアップや人間関係の改善なども期待できるでしょう。
リフレーミングは、さまざまなシーンで活用できるテクニックです。自分自身に対してはもちろん、部下・後輩への指導、チームの指揮などにも役立つので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。