実は身近にあるナッジ理論とは?ビジネスや組織強化への活用方法をご紹介 | Talknote Magazine

実は身近にあるナッジ理論とは?ビジネスや組織強化への活用方法をご紹介

私たち人間は、ある事柄に対して強制的にやらされることを嫌う傾向があります。しかし、社会やビジネスシーンでは相手に規約を守らせたり、正しい行動に導いたりしなくてはいけません。そこで取り入れられているのがナッジ理論です。

この記事では、ナッジ理論の定義や身近で使われているアイデア、マーケティングや社内コミュニケーションにおける活用法まで、詳しく解説していきます。

ナッジ理論とは?

ナッジとは、英語で「nudge」と書き、「ゆっくりと動かす」「近づく」「優しく説得する」という意味があります。ナッジ理論においては、「優しく説得する」に近い意味があり、「そっと後押しする」といった意味で使われることが多いです。

ナッジ理論は、強制されるよりもそれとなくしてほしいことを伝える方が、人間は動きやすいという性質に基づいています。
例として、目に入る場所に看板やイラストなどを配置するなど、優しくやってほしいことを伝えるような手法があります。

ナッジ理論を実践する上で、EASTというフレームワークが広く用いられています。

  • Easy(簡単・簡潔):シンプルにメッセージを伝えること
  • Attractive:取り組むメリットをつくる
  • Social(社会性):社会規範を示す
  • Timely:適切なタイミングで伝える

また、ナッジ理論では、4つのテクニックが基本とされています。

  • デフォルト:選んでほしい選択肢を最初から設定しておく
  • フィードバック:特定の行動に対して反応が返ってくる仕組みをつくる
  • インセンティブ:特定に行動に対してメリットを与え、再度行動を促す
  • 選択肢の構造化:選択肢をわかりやすくし、特定の選択肢に誘導する

デフォルトはサブスクリプションサービスで無料期間を設定することで登録を促す、インセンティブはポイント付与などが主な例です。

身近にあるナッジ理論

私たちの身近では、以下のようなナッジ理論が取り入れられています。

  • 健康診断やがん検診の受診率向上への取り組み
  • スーパーのカートやカゴの大きさ
  • 階段を使いたくなる仕掛け
  • 自転車置き場の貼り紙
  • 男子トイレの便器
  • 店舗での手指消毒への誘導

どのようにナッジ理論を取り入れていて、どのような効果をもたしているか詳しく見ていきましょう。

健康診断やがん検診の受診率向上への取り組み

健康診断やがん検診が大切であることは多くの人が理解していますが、そのときは健康であったり、受診にお金がかかったりすることから、後回しにしてしまうことも多いです。いつどこで受けるか、どの検査をするかなどを選ぶ必要があると、ハードルが高くなってしまいます。

そこで、受診率を向上するために、選択肢を減らすなど、簡易的に受診できるようになりつつあります。ハードルが低くなることで、徐々に受診率が高くなっているのが現状です。

スーパーのカゴの大きさ

スーパーのカゴを手に取ったとき、無意識にカゴいっぱいに商品を入れたいと思うことが多くありませんか。これもナッジ理論のひとつで、カゴの大きさに合わせようと商品を購入する傾向があります。

カゴの大きさを微妙に調節することで、売上アップを目指すのはナッジ理論を活用したテクニックです。

階段を使いたくなる仕掛け

駅構内やデパートなどでエスカレーターと階段があったとき、つい楽なエスカレーターを選びがちではないでしょうか。

そこで、階段に「ここまで登って〇〇カロリー」と表記したところ、階段を選ぶ人が増えたという事例があります。どちらを使うかは自由ですが、これは健康促進のために階段を登りたくなる仕掛けをしたナッジ理論です。

自転車置き場の貼り紙

ある雑居ビルでは放置自転車が増えてしまったため、「ここは自転車捨て場です。ご自由にお持ちください」という貼り紙をしました。

「自転車を放置しないでください」と伝えるよりも、放置すると持っていかれてしまうと伝えることで、放置自転車問題を解決したのです。ブラックなユーモアが利いたナッジ理論ですが、発想の転換によって見事に効果が得られました。

男子トイレの便器

オランダの空港に設置された男子トイレの便器に、ハエの絵を描いた取り組みがあります。それまでは、トイレをきれいに使うようにとお願いをしても、便器からそれた小便で床が汚れる、清掃するための人件費がかさむなど、多くの問題がありました。

ハエの絵を描いてからは、無意識に絵を狙うようになり、床の汚れが減り、清掃費用も大幅に抑えられたようです。

店舗での手指消毒への誘導

現在、多くの施設に消毒液が設置されています。今では当たり前になりましたが、感染予防対策が始まった当初は、消毒液を使用しない人も多くいました。

消毒液までの道をテープで示すなど、無意識に消毒コーナーまで行きやすくなる工夫を行っています。消毒液を使用する人が増え、ナッジ理論が新型コロナウイルス感染症予防につながりました。

マーケティングにおけるナッジ理論

マーケティングにおいても、ナッジ理論は効果的な手法です。強制せずに意図を伝えることで、抵抗感なくマーケティングを進めることができます。

例えば、メールマガジンをマーケティングに使用する際、ナッジのテクニックの中でもデフォルトを活用することが可能です。新規会員登録とメールマガジンの配信希望を別にすると、メールマガジンを希望しない登録者も出てきます。デフォルトを活用し、新規会員登録者を自動的にメールマガジンの配信対象にすれば、配信対象者を増やせます。会員登録を解除するには労力が必要なので、質が著しく低くなければ継続してメールマガジンを配信できるでしょう。

また、インセンティブとしてポイントやスタンプを付与するのも効果的です。ポイントやスタンプがたまると割引、プレゼントがあれば、ためようと来店頻度が高くなる傾向があります。

社内コミュニケーションにおけるナッジ理論

社内コミュニケーションは、チームワークを高めたり、業務の効率を上げたりするために重要です。ナッジ理論は社内コミュニケーションを活性化するためにも活用できます。

理論を上手く活用するポイントは、以下の4つです。

  • 目標を細分化する
  • ミーティングに入る言葉を決める
  • フィードバックを行う
  • リマインドを行う

目標を細分化する

はじめから大きな目標の達成を目指そうとすると、コミュニケーションのハードルが高くなってしまいます。些細なことから話せるようにするためには、目標を細分化することが大切です。

達成しやすい目標を細かく設定することで、その都度コミュニケーションを取ることができます。最終的なゴールを分割し、業務に取り組みやすく、コミュニケーションを取りやすい環境を整えましょう。

ミーティングに入る言葉を決める

ミーティングを行う際に、「最近どう?」「何か気になっていることある?」など曖昧な言葉だと答えにくくなります。会話が弾まず、本来聞きたい内容にたどりつけないこともあるでしょう。

内容の濃いミーティングをするためには、「今悩んでいることはありますか?」「助けてもらいたいことはありますか?」など、会話の入りを決めるのがおすすめです。質問が具体的になることで、コミュニケーションがスムーズになります。

フィードバックを行う

フィードバックを行うことは、ナッジ理論のフレームワークのうち、Attractiveに該当します。取り組みに対して評価したり、改善点を伝えたりすることで、自分自身を振り返り、成長を促すことが可能です。

フィードバックをすること、それに対して会話をすることが日常的になれば、ほめることや指摘すること、意見を言うことなど、発言のハードルが下がり、コミュニケーションが活発になるのではないでしょうか。

リマインドを行う

タスクに対してリマインドを行うこともナッジのひとつです。「期日までにやるように」と一度指示しても、人間の記憶や処理能力には限度があり、期日ギリギリになったり、締切を過ぎたりする可能性があります。

リマインドによって期日を伝えたり、やってもらいたいことをこまめにお願いしたりすることで、タスクを強制するのではなく、何気なくタスクへの取り組みを促すことが可能です。

2つのナッジ理論「良いナッジ」と「悪いナッジ」

ナッジ理論は、必ずしも良いものばかりではありません。良いナッジは、強制することなく自然と良い行動に導くものです。一方、悪いナッジは「スラッジ」とも呼ばれ、不利な選択肢に誘導するナッジのことを言います。

スラッジでは、サービスを退会する際に退会すべきではないメッセージを何度も表示したり、別のサービスをしつこく進めたりして、選択をゆがめるのが特徴です。セール商品の通常価格を不当に高く設定し、購買意欲を煽るのも悪いナッジと言えます。

また、良いナッジと悪いナッジの中間に、ファジーナッジがあることも覚えておきましょう。ファジーナッジとは、ナッジと言えるか曖昧なものです。良いナッジに含まれる場合もありますが、既存の手法に基づいた知見や意図がはっきりしていないケースをファジーナッジと言います。

まとめ

ナッジ理論は、身近なところでも使われており、自然と良い行動に相手を導く手法です。駅構内の階段に表記されているカロリー表示、手指消毒への誘導など生活の中にあるだけではなく、マーケティングや社内コミュニケーションにも活用できます。

ただし、ナッジが不利にならないように、良い行動に誘導することが大前提です。ナッジのフレームワークやテクニックを参考にして、様々なシーンにナッジ理論を取り入れてみましょう。

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