組織活性化に役立つマネジメント手法 「フィッシュ哲学」とは? | Talknote Magazine

組織活性化に役立つマネジメント手法 「フィッシュ哲学」とは?

様々なマネジメント手法が世の中にはありますが、「フィッシュ哲学」をご存知でしょうか。アメリカで生まれた組織改善に役立つ手法で、魚市場で行われたマインドの改善によって組織を変えたという話が元になっています。

この記事では、フィッシュ哲学について、注目されている背景や4つの行動原則、具体例を解説します。現代でも役立つ手法なので、ぜひ組織改善に活用してみてください。

フィッシュ哲学とは?

フィッシュ哲学とは、マネジメント手法の一つで、アメリカ西岸部・シアトルにあるパイクプレイス市場で生まれました。パイクプレイス市場は廃れた魚市場であったものの、ある魚屋の熱意を持った従業員が組織体制や働き方の改善に動き、従業員同士が魚を投げて渡すパフォーマンスの新しさもあって、世界的に有名な魚屋さんになりました。

とある魚屋の成長が市場に良い影響をもたらし、パイクプレイス魚市場は活気を取り戻します。経営コンサルタントであったスティーブ・ランデン氏とジョン・クリステンセン氏が市場の様子や改善の取り組みを見て、理論として一つの手法にしたものがフィッシュ哲学です。

フィッシュ哲学は、世界約4,000社以上で取り入れられ、企業だけではなく教育現場や医療現場にも広まりつつあります。

フィッシュ哲学が注目される背景

フィッシュ哲学が注目される背景には、働くことに対する価値観の変化、働き方の多様化などがあります。これまでは終身雇用制度や年功序列などによって、長く勤められる会社かどうかが重視される傾向がありました。

「社会経済生産性本部「働くことの意識」調査」によると、新入社員の会社の選択理由では「自分の能力、個性を生かせるから」「仕事が面白いから」など、能力の発揮ややりがいを求めるように変化しています。

賃金を得るために働く部分ももちろんありますが、自分が企業や社会に貢献している実感を得たり、楽しさや面白さを感じながら働いたりすることが重視される傾向があり、企業もやりがいのある組織を作る必要が出てきました。フィッシュ哲学は、「遊ぶ」「楽しませる」などのマインドが軸になっているので、楽しみながら働く組織づくりにはぴったりです。

また、働き方の多様化によって、正社員だけではなく、フリーランスや業務委託、ギグワーカーなど様々な選択肢が現れています。必ずしも会社に勤める必要はなくなりつつあり、自分の能力を発揮できる、正しく評価を受けられる、ワークライフバランスを実現できる場所へと離職・転職するケースも少なくありません。

少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、人材不足に直面している企業にとって離職は大きなダメージであり、定着率の向上が求められています。長く働きたい企業になるために、従業員自身が楽しんで、お客様を楽しませることを大切にするフィッシュ哲学は現代の組織づくりに必要とされているのです。

フィッシュ哲学の4つの行動原則

フィッシュ哲学では、4つの行動原則が軸になっています。

  • 遊ぶ(Play)
  • 態度を選ぶ(Choose Your Attitude)
  • 注意を向ける(Be There)
  • 楽しませる(Make Their Day)

それぞれどのようなマインドを表しているのかを確認し、フィッシュ哲学を正しく理解しましょう。

遊ぶ(Play)

「遊ぶ(Play)」は、働く人自身が遊ぶように楽しむという考え方です。人気のために楽しむのではなく、従業員自身のアイデアで楽しみながら働くことで、周囲の人が惹きつけられます。

パイクプレイス魚市場の場合は、従業員同士で魚を投げて渡すパフォーマンスが人気になりましたが、「こうしたら面白そう」というアイデアで始まったものです。「面白いことをやってみよう」「これは楽しそう」というマインドで働くことによって、仕事を心から楽しむことができ、組織のチームワークも高まっていきます。

態度を選ぶ(Choose Your Attitude)

「態度を選ぶ(Choose Your Attitude)」とは、自らの態度が周りにどのような影響を及ぼしているのかに気を配ることを指しています。自分の態度は、つい周りの行動によるものと考えがちですが、無意識にとった態度が周りに影響を与えていることがあります。

例えば、クレームの対応を終えた後、自分では気持ちを切り替えているつもりでも、周りにはイライラや怒りが伝わり、雰囲気が悪くなっているかもしれません。

フィッシュ哲学では、自分の態度に責任を持ち、意図的に態度を選ぶことを目指します。周りに良い影響を与えられるだけではなく、自分自身も気持ちよく過ごすことが可能です。

注意を向ける(Be There)

「注意を向ける(Be There)」とは、「Be There(そこにいる)」人に注意を向けることです。自分の周りにいる従業員やお客様に注意を向けることを、フィッシュ哲学では重要視しています。

周りの人一人ひとりと向き合い、丁寧に接することによって、コミュニケーションや人間関係が改善することが可能です。

楽しませる(Make Their Day)

「楽しませる(Make Their Day)」は、「喜ばせる」と表現されることもあります。多くの人はほめられたり、認められたりすると嬉しくなり、相手を満たすことが可能です。

フィッシュ哲学では、見返りを求めることなく、相手を楽しませる・喜ばせることを大切にしています。難しい行動を求めているわけではなく、笑顔で言葉を伝える、ジェスチャーで表現する、心のこもった言葉で感謝を伝えるなど、ちょっとした工夫で相手を幸せにすることがポイントです。

フィッシュ哲学の具体例

フィッシュ哲学の行動原則は理解できたものの、具体的にどのような取り組みが必要なのかイメージできない方も多いのではないでしょうか。

ここでは、行動原則それぞれの事例に加えて、医療現場、教育現場の実践事例についてもご紹介します。

「遊ぶ(Play)」の例

「遊ぶ(Play)」の典型的な例、ユーモアやアイデアを発揮することです。従業員それぞれが持つユーモアやアイデアを発揮することによって、一人ひとりでは思いつかなかった面白いものが生まれてきます。

ユーモアやアイデアをそれぞれが出すことと同じく、他の人の考えを受け入れる意識が大切です。たくさんの声が認められることで、意見交流が活発になり、魅力的なアイデアが生まれるでしょう。

失敗を恐れずにチャレンジすることも、「遊ぶ(Play)」の例です。ユーモアやアイデアが必ず成功するとは限りませんが、失敗の中で新しい発見ができることもあります。前向きに実践することによって、働く人も顧客も楽しいものが作られていくはずです。

「態度を選ぶ(Choose Your Attitude)」の例

「態度を選ぶ(Choose Your Attitude)」では、状況に合わせてどのような態度をとるべきかを明確にすることが大切です。職場や接客などのシーンを思い浮かべて、理想的な態度を考えてみましょう。

理想的な態度を考えるときに、1日の態度を振り返ると、自分自身の態度を客観的に分析できます。理想の態度だったとき、あまり良くなかったときを整理して、良くなかった部分を日々改善しましょう。

自分自身で明確な態度がわからないときは、周囲の人からお手本を見つけるのがおすすめです。まずは真似するところから始めて、徐々に自分らしい良い態度を模索すると良いでしょう。

「注意を向ける(Be There)」の例

「注意を向ける(Be There)」では、周りの人の声や必要としているものに注目しましょう。同僚や顧客の行動に着目し、何を必要としているかを考えると、手助けや声かけをしやすくなります。行動だけではなく、会話にも耳を傾けると、観察するだけではわからなかったものが見えてくるでしょう。

また、注意を向けられなくなる原因に対処することも大切です。一つのことに集中しすぎると周りが見えなくなるため、スマホやゲーム機、パソコンなどの使用は必要最低限にすると良いでしょう。むやみに使わないことで、周りに目を向ける時間が生まれ、視野が広がります。

「楽しませる(Make Their Day)」の例

「楽しませる(Make Their Day)」を実践するためには、積極的にほめることを意識しましょう。一緒に働く人や顧客の良いところに目を向け、「助かったよ。ありがとう」「素敵ですね」と声をかけたり、ふせんやメモで伝えたり、グッドサインをしたりすると、嬉しくなる人が多いはずです。

また、ほめることを増やすのと合わせて、相手が嫌な気持ちになることをやめましょう。自分たちが楽しくても顧客にとって求めていないことであれば、それは楽しませることにはなりません。相手が何を求めているかを考えて、嬉しくなることや楽しくなることに変えていきましょう。

医療現場での実践事例

日本の医療現場でも、フィッシュ哲学の導入が進んでいます。東京慈恵会医科大学附属病院は、看護部門に初めてフィッシュ哲学を導入しました。看護師自身がイキイキ働くことによって、より良い看護サービスを提供できると考え、イベントの実施や装飾などの取り組みを行っています。

福岡青洲会病院では、忙しさのあまり、スタッフ同士の声かけが少なかった状況を受けて、感謝の気持ちを伝えられるメッセージボードを設置しました。自分へのメッセージに喜びを感じたり、相手をほめたいと思うきっかけが生まれたりして、スタッフの声かけが増え、モチベーションの向上にもつながっています。

教育現場での実践事例

アメリカのチャートハウスラーニング社では、フィッシュ哲学を教育現場に導入することによる効果を提唱しました。

教師に対しては、ユーモアやアイデアを認めあったり、周りに注意を向けたりすることによって、チームワークの向上を期待できるとしています。生徒にとっても、失敗を恐れずチャレンジできる環境や他者に気を配る能力の向上によって、チャレンジ精神や学習意欲などを高められると説明しています。

学校全体としての効果もあり、教師、生徒、スタッフ、来訪者全員が気持ちよく過ごせる環境をつくることができるとしているのも特徴的です。

まとめ

アメリカの魚市場で生まれたフィッシュ哲学は、「遊ぶ(Play)」「態度を選ぶ(Choose Your Attitude)」「注意を向ける(Be There)」「楽しませる(Make Their Day)」という行動原則で、組織の改善を目指すマネジメント手法です。

従業員自らが楽しみながら、お客様や同僚に向き合い、相手を喜ばせる態度や行動によって、仲間意識や顧客満足度の向上を実現します。

行動原則を実践するためには、日々のちょっとした工夫やマインドの転換が大切です。具体例を参考にしながら、自社でもできるところから取り入れてみましょう。

RELATED

組織の情報共有を最適化しませんか?

14日間無料でご利用いただけます。
機能、価格、導入方法、その他ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。