潮流を捉え、 社員に愛される会社に
1983年7月20日生まれ。高校を卒業後、父親が経営する飲食店チェーンに入社し、サービス業のノウハウを学ぶ。2006年4月に23歳で独立。新宿歌舞伎町に「北海道厳選素材 新鮮炙り焼き居酒屋はなこ」の1号店をオープンする。2008年6月、運営会社である株式会社セクションエイトを設立。「居酒屋はなこ」「BEER&PIZZA HANACONA」「WINE&PIZZA HACHI」「WHISKY BAR DARUMA」を東京、大阪を中心に30店舗以上を展開。2014年3月には「相席屋」赤羽店をオープン。新しい形の居酒屋として、一躍脚光を浴びる。「相席屋」を全国展開する一方、時代のニーズを先読みした斬新な飲食店「FIX LOUNGE」や「The Public stand」で、飲食業界のみならず幅広い分野で注目を集めている。全国に、相席屋57店舗、パブリックスタンド10店舗展開中。 ※2018年6月現在
40の挑戦から生まれた3つのヒット
今でこそ全国に50店舗以上の「相席屋」を展開しているセクションエイトですが、これまでずっと順風満帆だったわけではありません。確かに2006年の創業当初に1号店をオープンした「北海道厳選素材 新鮮炙り焼き居酒屋はなこ」は、あっという間に30店舗以上になりましたし、まったく撤退することもなければ、赤字も出なかったので、僕らも「右肩上がり」が続くものだと思っていました。
しかし、32店舗目を境に数店舗が赤字に転じたのです。当時の僕は「赤字の店を閉めれば黒字化する」と簡単に考えていました。ところが、赤字の店舗を切ると、また赤字の店舗が出てきての繰り返しに悩まされます。いくら話題になろうとも、お客様は徐々に飽きていく。肌身を持ってそう感じました。特に飲食店において、これは宿命かもしれません。
転機となったのは、2014年にオープンした「相席屋」です。婚活と居酒屋というふたつのコンセプトを持った飲食店は、メディアにも大きく取り上げられ急成長しました。そこで「はなこ」は全店クローズし、相席屋に鞍替えします。もうひとつ僕らの成功事例として上げられるものには、2017年にオープンした「The Public stand」があります。業態としてはスタンディングバーで、お酒を飲みながらさまざまな人と出会える場所です。
はたからすると、「はなこ」「相席屋」「The Public stand」の3つを連続で成功させたように見えるかもしれませんが、そうではありません。40ものビジネスに挑戦した結果、3つのスマッシュヒットに恵まれただけです。ちなみに、お店が流行ることは思っている以上に大事で、話題の店で働いていれば従業員は自信を手にできます。自然と優秀な人材も集まってきます。その結果、お店にはさらなる活気が生まれるものです。
新規開拓とブランディングで成長し続ける
「はなこ」が失速した経験を踏まえて、「相席屋」では積極的なプロモーションによる新規顧客の開拓に重きを置きました。なぜリピート率を上げることよりも、新規開拓を重要視したのか。それはお店の価値を考えた結果です。「相席屋」にとって、優れた接客やおいしい食事も大切ではありますが、このお店で最も重要なことは“さまざまな人と出会えること”。だったら出会いの数を増やすべきです。つまり新規のお客様を増やすことが、顧客満足度を高めることに直結します。
もちろん店舗の売り上げが失速する理由には、外的要因もあります。どうしても話題性をウリにしていると模倣店が乱立するものです。だから「相席屋」は、とにかくスピーディな展開にこだわりました。速さにこだわったのは、“僕らが本物である”というブランドを一気に確立するためです。結果的に、相席屋に対する信頼感は自然と醸成できたと思っています。ちなみに「はなこ」のときは6年で30店でしたが、「相席屋」は3年で約50店舗以上。出店のペースは3~4倍です。一番手として走り続けると、サービス品質にも差が出ます。模倣店にはないノウハウが蓄積されるからです。特にマッチングのコントロールやその仕組みづくりの部分では大きな差別化ができています。
積極的なプロモーションと、サービス品質での差別化。来店するお客様のニーズを捉えた上で、実のある施策を打てたからこそ、僕らは淘汰されずに生き残ってこられました。おかげで従業員には、待遇面で還元できています。今は単純に時給換算すると「はなこ」時代の約2倍です。それによって一人ひとりがセクションエイトにもっと愛着を持ってくれると嬉しいですね。
振り返りによって、事業の価値を実感する
従業員が会社に愛着を感じることは、とても大事です。セクションエイトの理念や「相席屋」のブランド、そういったものにどれだけ愛着を感じられるかで、店舗運営のクオリティは変わってくるからです。ところが、僕らはフランチャイズ展開をしているため、どうしても理念よりも利益が考え方の軸になりがち。それが難点です。そこで開催するようになったのが、定期的に全国の店舗が参加するフォーラムです。ここにはフランチャイズのアルバイトメンバーたちも参加します。
フォーラムに参加する店舗を全国から選抜する予選期間は半年くらいあって、期間中には売り上げが審査されるのはもちろん、お客様の滞在率なども調査されます。僕らの業態は一般の飲食業に比べると特殊で、お客様の滞在時間が重要視されてきました。楽しかったら長く滞在する、つまりそれだけ満足度が高いことを意味するからです。さまざまな項目の合計点を競い合った末に選ばれた4つの店舗は、行った施策とその成果について、フォーラム当日にプレゼンします。
優勝者はオーディエンスからの投票で決まります。優勝した店舗に贈られる賞金は100万円。その分配方法は店長に任せていますが、アルバイトメンバーにもそれなりの額が行き渡っているはずです。
このフォーラムには、賞金の獲得や目標に向けて頑張ること以外に、もうひとつの意味があります。それが“振り返り”です。自分たちの取り組みを振り返り、次の施策を考えるほか、自発的な“振り返り”によって、自分たちの仕事の価値を実感します。なかには、プレゼン中に今までの苦労や頑張りを思いだして、泣きだしてしまう従業員もいるほどです。それほどまでに熱い想いが、フォーラムではシェアされてきました。いずれにしても、こういった取り組みを通じて、僕らは会社への愛着を高めてもらってきたのです。
ビジネスに関する情報の共有に、
Talknoteは欠かせない。
経営者という立場上、僕は戦略や情報を各店舗や社員と共有する必要があります。そこで活用しているのがTalknoteです。導入したのは6、7年前。まだガラケーを使っていた頃です。当初はお試し感覚でしたが、今となっては最も使用頻度が高いアプリのひとつです。
Talknoteは、完全にビジネス用です。共有する情報によって、さまざまなグループに分けています。たとえば、新店オープン作業の進捗の共有、議事録の共有、ほかにも類似店の情報共有などにも用いています。マーケティングに関する重要な情報も飛び交っています。刻々と状況が変わる飲食業にとって、情報にアンテナを張っておくことは重要です。だからこそ関係者がリアルタイムで情報を受発信できるTalknoteが重宝します。
ペーパーレス化にもTalknoteは一役を買っています。セクションエイトでは、会議の資料は必ずPDFで事前配布する決まりです。その際、KPIなどの数値情報はすべて図示し、視覚的に把握できるようにします。効率的に情報を伝え、会議に余計な時間をかけないこの方法は、ダイニングイノベーションから採り入れたメソッド。いずれにしても、資料はTalknoteのおかげで効果的に共有され、印刷費を削減できるだけでなく生産性アップにも貢献しています。
Talknoteが社員同士のつながりを深める
セクションエイトでは生産性アップのためのみならず、従業員のモチベーションアップなどにもTalknoteを活用しています。
たとえば、日々の売り上げデータを全社員に共有することで、他店舗に対するライバル意識を刺激し、売り上げに対する意識を底上げしています。Talknoteによって情報をオープンにするメリットは計り知れません。スレッド内に情報が日々蓄積されていくので、“どんなことが起きたときに、どれだけ売り上げが変化したのか”をいつでも分析できます。つまりノウハウ共有が容易なわけです。
社員間でのコミュニケーションツールとしての役割も担っています。特にやり取りが活発になるのは、新入社員が挨拶をしたとき。タイムラインに簡単なプロフィールとともに「よろしくお願いします」と投稿すると、ほかの社員たちが「いいね」やコメントをどんどん返していきます。店舗が違ったり、立場が違ったりすると、顔を合わせる機会はそうそうありませんが、コメントをくれた人のことは自然と記憶に残るものです。それにアイコンには必ず顔写真を用いることをルール化しているのは、同じ会社の仲間として顔が見えるだけで安心感が高まるからです。地域の壁を越えて、横のつながりを強化してくれる。それもTalknoteの良さです。
余談ですが、社内にあるさまざまな連絡グループのアイコンは、担当者が自由に決めています。結構悪ふざけをしているものもあったりしますが、社員のユニークな一面が見えて面白い。これら悪ノリも含め、普段はできない積極的なコミュニケーションが生まれることもTalknoteの魅力です。
コミュニケーションツールとして、情報共有ツールとしてTalknoteを活用するのはもちろん、社員が会社にもっと愛着を持てるようにするためにTalknoteを活用したいですね。相席屋で生まれた新カップルの情報が共有される「良縁報告」のグループがあるのも「自分たちの仕事は、誰かの人生を変えるほどの価値がある」と実感してもらうためです。これら取り組みによって、会社への愛着が高まれば高まるほど、社員たちはもっと積極的にコミュニケーションをとってくれるはずですし、それこそがセクションエイトのさらなる成長に欠かせないものだと感じています。